川の照り

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

御徒町にて

夕方、華さんと御徒町で落ち合い、羊肉スープの店へ。カウンター席の端っこに座る。客は僕以外、中国語ネイティヴのようだが、やたらみんな眼鏡をかけている。外で買った飲料を持ち込んでもここはOKだ。女の子がフラペチーノみたいなのを飲んでいる。そうい…

蛮勇━愛を語るより半ケツで踊ろう━

〈セカチュー〉と呼ばれたブームを勿論知らないわけじゃない。2001年初版発行だが、当初はそれほど話題にならなかったというから、おれが知ったのはご多分に洩れず、100万部を突破した2003年、映画化・テレビドラマ化された2004年、そのあたりだろう。20代後…

みずうみ

大晦日。午後、牛乳を切らし、買いに出る。防寒にエディ・バウアーのダウンジャケットを羽織り、中はパジャマ、裸足にスエード靴という珍妙な恰好である。近所の寂れた商店街に並ぶ書店は今日も開いている。ここには品揃えというほどのもないのだが、文庫本…

THE VANISHING

1ヶ月以上かけて失踪の学問的な書物を読了する。示唆に富み、おもしろかったが、いろんな概念を駆使しながら論証を積み重ねていく形式や、迂回にもみえる章立てもあり、ややまどろっこしさを感じた。晦渋にしているつもりはないと思うが、文章としてもうちょ…

烏の濡れ羽色’71

父親の昔話。以前にも言及したことがあるが、私の父方の祖母は勝浦の出身である。それで父親が大学生の夏休み─今から半世紀も前のことだが─に興津の親戚の家にアルバイトに行っていた。海沿いのその家の庭はかなり広く、海水浴客の駐車場として終日500円で貸…

聡明

秋吉久美子、桃井かおり、原田美枝子のさんにんは70年代を象徴する女優という認識です。彼女たちを抜いて70年代日本映画は語りようがないと考えている。私の母親に近い年齢の人たち(桃井と母親は同い年)ですが、10代・20代の彼女たちの躍動する映像が、惜…

ドラゴンフルーツふたたび

向こうの方で青空が広がっているが、この上空一帯は重苦しい灰色の雲が湧いており、信号待ちをしている鶴岡の広い額にぽつ、ぽつ、ときたと思ったら、見る間に激しい雨が降り出した。台風が過ぎてのち、数日こんな感じの不安定な天気だ。昨夜の散歩では、塔…

よく見るとファニーですよ。

先月、読んだ小説。『アウア・エイジ』、おもしろかった。【以下、ややネタバレあり】 疲れた四十男が主人公で、彼がかつて一緒に塔を探した女、その女が殺されてから長い時間が経ち、ひょんなことから彼は単独で幻の塔探しを再開する道行きとなる。現在の男…

惑溺と頼みの綱

『人間の絆』(原題 Of Human Bondage・1915)読了。ミルドレッドに尽きます。モームはよくぞミルドレッドという女を造形しましたよ。ペルシャ絨毯がどうとか他のさまざまな挿話は正直今霞んでいます。長編だけあって登場人物もそれなりに多いのだけど、ミル…

流星のように

潤一郎の未完小説「鮫人」(1920・大正9)を読む。バルザック的大作を目指して書かれ始めたとも言われるが、物語が進むほど散漫になり、深夜の浅草の描写で途切れた。同年、潤一郎は横浜の大正活映株式会社文藝顧問に就任しており、そっちが忙しくなったとか…

グアシャ

7月2日、晴れ。おとといの深夜、トイレに下りていったHさんがなかなか戻ってこない。20分も過ぎたろうか。大便の可能性よりも不安が先に立ち、がばっと起き上がると僕も下りていった。すると、トイレの扉が開け放たれ、便座にHさんはいたが、壁に頭をくっ…

丝绸之路②

久しぶりに気持ちのいい晴れ。Hさんは昨日池袋で髪型を整え、今朝1ヶ月ぶりくらいに西川口へ向かいました。Gは洗濯物を干すとそれ以上家事をする気にもなれず、デーツをむしゃむしゃかじりながら、おれも散髪に行くかと一瞬考えましたが、どうも気乗りがし…

死神の列

五味川純平『人間の條件』(岩波現代文庫)読了。何か巨大なものを突きつけられたという気がする。ただ、その塊に対して私ならこうでこうでと今は反射できない。今後もできないかもしれない。楽しい読書とは到底いかぬ作で、途中何度か、私は読むのをやめ、Y…

連休中の本と映画、それは満洲とロマンポルノです。

何日か前、ツイッターで目にした記事で、長野県が県外ナンバーのクルマの実態調査に乗り出しているというのがあった。写真が載っており、背に「長野県建設部」とある赤いベストを着た職員が、道路脇のパイプ椅子に座って往来を走るクルマを監視している。連…

中国女

8日夜。『大地』読了。いやー、おもしろかった。四分冊だが、最後の数十頁まできて、ちょっと短過ぎるんじゃないかと思った。このままもっと読んでいたいと。淵と美齢の行く末が気になるだろうと。先入見でキリスト教色が濃かったらどうしようとか思っていた…

サイデンストリッカー

4月1日。この週末も蟄居するとしたら、ロマンポルノもいいのだけれど、分冊の長編小説でも挑戦しようかしら。そう思いながら本棚を眺めていると目に留まったのが、硝子戸の向こうで光っているパール・サイデンストリッカー・バック『大地』でした。サイデン…

花冷え

29日。雪。新型コロナとは関係ないような貌で降っているが、外出を控える気持ちが強化され、東京の人間にとっては関係ないこともない。どこかで鴉が鳴いている。雪は避けているのか。僕は三月中旬に生まれたのだが、今日みたいな日があると、三月の寒い日は…

日本にとって浙江省は

昼。昨晩の残りのカレー等を食う。Hさんは例の上海人のおばさんとどこかへ出かけた。右手にスプーン、左手で本の頁を繰りながら、『子どもたちに語る 日中二千年史』(小島毅著・ちくまプリマー新書)を読了。子どもたちに語ると謳いながら、おっさんでも十…

先生の変態

【2020・令和2年1月31日に考えた谷崎潤一郎著作、私のベスト10(年代順)】 1.「饒太郎」(1914・大正3) 2.「秦淮の夜」(1919・大正8) 3.「富美子の足」(1919・大正8) 4.「途上」(1920・大正9) 5.「蓼喰ふ虫」(1928~29・昭和3~4) 6.「…

双眸

根津仁香(じんか)著『根津甚八』(講談社)読了。 11月27日の雑記で根津甚八について触れたが、その後どうしても彼のことが気になり、古書で購入し、一気に読んだ。妻が書いた夫の伝記。さまざまな病を患った末、ほとんど外出もしなくなった根津に妻が自伝…

猫の額

家の向かいの建売住宅の工事が終わりに差し掛かっている。木造3階建だから工事期間中も不快になるほどの騒音や振動はなかった。前面の狭隘道路にトラックが停まりぱなしになるのは鬱陶しかったが。この建売の右隣りに古ぼけた木造2階建の家屋があり、昔から…

中国結び飾り

気がついたら2月か。福建喫茶にこれだけ通っていると、だんだんママの事情にも通じてくる。微信で繋がってモーメンツもみられるからなおさらだ。それはそれとして、彼女は午前11時半より前には店にいないことが多い。代わりにというか、50絡みの中国人の男が…

潜り抜けて

29日夜。対面し、それぞれの文章を読む。Hさんは仕事の何か、私は「蘆刈」(岩波文庫『吉野葛・蘆刈』所収)。 こっちは『猫と庄造と二人のおんな』の注解(新潮文庫)。谷崎が『源氏物語』の現代語訳をやっていた時に唯一書いた小説。女優の本上まなみが薦…

妖しい光線の美女

18日。横浜に排练(パイリェン・リハーサル)に行って、昼飯も食べそびれたというHさんに晩飯をつくらせるのも酷だから、上野で落ち合って中国料理店へ。ここの老板娘とHさんが知り合い。そういえば、いつだかニラレバとレバニラの話をテレヴィでやっていて…

何者

松浦寿輝『秘苑にて』(書肆山田)より 川勝徳重『電話・睡眠・音楽』(リイド社)。この表紙は表題作に関わるものだが、他にも13の短篇が収められており、それぞれに表題作とはかなり毛色の違う劇画だ。私にはむしろそちらの方がおもしろかった。いちばん好…

元旦、実家、柴犬の置物

元旦、実家。明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。柴犬の置物。非常に精緻に出来ているが、制作者は意外にも欧米人なのだと母親が云う。かえって日本犬の特徴をよくとらまえるのかも知れない。それと日本はとかくディフォルメしが…

餃子活動

30日、晴天。冬らしい凛冽な空気に頬を冷やされながら、西川口へ。Hさんの仕事仲間の餃子パーティ(饺子活动)があるというので便乗。普段全然乗らないが、京浜東北線の快速って日暮里停まらないのだった。それを失念したおれが日暮里のプラットフォームでH…

お引っ越し

昨日、中古戸建の引渡しを受けた。といって、今住んでいる部屋の解約届もまだ出していない。すでに12月中旬に差し掛かり、いくつか忘年会も入っている中で、諸々手続きや待機が要るので、一個一個のんびり処理していこうと思っている。今日は紅いシクラメン…

間宮林蔵

関東平野のただなかにある間宮林蔵記念館に行く道はこんなです。最寄り駅はJR取手かTX線守谷のようですが、いずれにしてもバス便のよう。 記念館専用の駐車場には僕のクルマを入れて4台が駐まっているのみでしたが、そのうち2台はナンバーから推して館の職員…

橋場今昔

『加藤嶺夫写真全集 昭和の東京2 台東区』(川本三郎・泉麻人 監修 deco)。昭和40年代、今から50年近く前に撮られた写真で、私もまだ生まれていないが、この頁を開いてしばらく眺めていると、あそこかなとめぼしがつく。私が高校生まで育った台東区北東部の…