川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

アッシュグレーの休日

f:id:guangtailang:20210923163520j:image散髪に行く。外はからっと晴れて気持ちがいい。いつもの美容院。客はそこそこ入っているが、不思議にどこかがらんとした印象だ。ちょっと考えて、今日は入口に座って待つ客がいないからかもしれない。それと、下町の店だから客のなかにお喋り好きが2人か8人いるのが通常だが、この時間たまたまそうゆう人がおらず、雑談の声が聞こえてこないからかもしれない。美容師が黙々と切っている。

担当は小柄で華奢なリスのような女性だった。カチューシャをしていて、手から何からすべてが小さく細い。見た目も奇抜じゃないのだが、あとでよく見ると髪はきれいなアッシュグレーに染められていた。その人に、わたしの薄毛は短く整えられた。

f:id:guangtailang:20210923163527j:image書店に寄る。こちらはまた妙に客が多く、棚と棚のあいだにしゃがみ込んで延々目的物を探す人がいる。まあ書棚のつくりが上から下まであって、そうなるだろう。その列はあとで回ればいい。

欧米の小説好きに、死ぬまでに読むべき長編小説をひとつ挙げるとすれば何ですか? と問うたらこのレフ・トルストイ戦争と平和』がいちばん票を集めそうな気がする。新訳がやっと完結したみたいで、最終巻を買う。いつか読まなければと思うが、今はまだわからない。なにせ、長編というか大長編だ。

f:id:guangtailang:20210923163536j:image最寄駅からふらりと電車に乗って、がら空きのシートに座り、下を向いて携帯を弄っている。視線を上げれば向かいのじいさんのお帽子(キャップ)がいい具合にくたびれていて、見惚れる。これは各駅のようだ。ちょくちょく停車しながら埼玉を北上している。せんげん台でふらりと降りて、反対ホームの急行久喜行に乗り換えた。

f:id:guangtailang:20210923163543j:image終点の久喜で何をするでもなく、また急行で引き返す。この案内板を撮ったくらいだ。時々こうゆう酔狂がしたくなる。帰りの急行は上部の小さな窓がどれも開いており、そこから絶妙な風が入ってくる。車内に差し込む光もやわらかく、眠気を誘う。電車の揺れも相まって、気がつけば東京まで戻ってきていた。今日のような天気ばかりの土地なら、そこはシャングリラ。

f:id:guangtailang:20210924083544j:image45歳の頭髪状況の記録として残しておかなくてはならない。