川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

烏の濡れ羽色’71

父親の昔話。以前にも言及したことがあるが、私の父方の祖母は勝浦の出身である。それで父親が大学生の夏休み─今から半世紀も前のことだが─に興津の親戚の家にアルバイトに行っていた。海沿いのその家の庭はかなり広く、海水浴客の駐車場として終日500円で貸していたそう。それの徴収を父親はやっていた。500円は硬貨じゃなく岩倉具視肖像の紙幣だったろう。20台以上駐められ、連日満車だったという。

一方、守谷海岸沿いにも親戚の酒屋があり─当時コンビニはなく─海の家や周辺の民宿に卸して独占状態だったそう。あるじは年間の半分の売上を夏休みに稼ぐのだと豪語していた。その頃は大変な海水浴ブームで、無論アクアラインは存在しないが、東京から外房の海に人が押し寄せ、砂浜は芋洗い状態。端の方ではキャンプを張っている輩もいた。夜やることのない若者たちは当然に酒を飲む。そして口論の果てだか女の取り合いだか知らないが、殴り合いの喧嘩を始めるグループもあった。サッポロジャイアントという特大の瓶があり(今もあるのかな)、それを振り回す莫迦者もいたらしい。その瓶で殴られたかは知らない。ただ父親が記憶しているのは、地域の有線放送で輸血の協力者を募る内容のものが流れてきたのを数度聞いたという。ほんとうだとしたら怖い話だ。絶命した人もいたのかも知れない。パレオホラーエピソードやん。

f:id:guangtailang:20201114100758j:image10月から現在までに読了した本。ここ数年は年間に20~30冊くらいのペースで読書している。こんなので読書家とは言えないし、言われたいとも思わない。読書家ってなんだ? ただ読みたい本はつい買ってしまい、積読が増えていくだけだ。夜、ウイスキーをぴちゃぴちゃ舐めながら頁を繰っていると、まもなく眠気が来る。不惑を過ぎてからの顕著な傾向で、これも一冊を読むのに時間がかかる原因のひとつだ。

f:id:guangtailang:20201119091548j:image勝新太郎が監督・主演したつまらない映画。実験的と言えば言える作風なのだろうが、致命的だと思ったのは、場面と場面のつながりがやたらぼんやりしていること。クローズアップに拘泥した映画で、それゆえに各場面のシチュエーションがすぐにわからず、しばらく見ていて、ああそういうことなのねと合点する。クローズアップはモノは映してもコトはよくわからない。烏の濡れ羽色の髪を撫でつけた30代半ばの山崎努。千葉県東葛飾郡松戸町(現松戸市)出身。

f:id:guangtailang:20201119120500p:plainf:id:guangtailang:20201119120618p:plainf:id:guangtailang:20201119120659p:plainf:id:guangtailang:20201119120738p:plain半世紀前に現代的な風貌をした横山リエ。ローションを操るが、2018年の映画の場面と言って言えないこともない。