川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

ボタンを買いに

f:id:guangtailang:20231224193142j:image日暮里や浅草橋にボタン専門店があるのは聞き知っていたけれど、昨晩布団に潜り込んで調べたら軒並み日曜日は開けていないのだった。それでも他に近所ではと親指を連打していると、浅草にいかにも昭和然としたYという店をぽつんと見つけた。ここは日曜日も営業している。店のひとつだけあった口コミを読んだら、店主の老人に会いたくなったのでHさんを見舞ったあと訪れた。

人生もとうに半ばを過ぎて、ボタンを買いに行くのは初めてだったから、それのもげたジャケット現物を持ってこなかった。「ボタンもいろいろありますからねえ」と、店の奥に座っていた彼は悠揚迫らぬ風に腰を上げた。無論ボタンの種類ではなくサイズのことだが、ツイードジャケットによく使うくるみボタンはどれもおんなじサイズのような気がした。が、「そうですね。近所なんで一度戻って持ってきます」と言い残し、クリスマスイブのためか余計にごった返す雑踏に出た。

古風だが白さが新しい紙箱からくるみボタンを何種類か取り出して、僕がガラスケースにひろげたフォックスファイヤーのツイードジャケットの上にそれらを並べた白髪の彼は、「これがいいと思うんだけどねえ」と元々ついているものより明るい茶のボタンをすすめた。念のため、黒っぽい茶のボタンも合わせてみたが、結局彼の言うとおりにすることにした。ただ、袖のボタンはついているのだから変えなくていいのじゃないかと商売っ気のない彼に、いずれとれてしまうから予備のためにと言って合計9個買った。すると袖用を1個おまけしてくれた。3,600円。それから「これ、子供だましのようだけど」と言ってポッキーとキットカットの小袋をくれた。思わぬクリスマスプレゼントで笑みがこぼれた。83歳のあなたから47歳のわたしへ。その時、中年の欧米人夫妻の奥さんの方が入ってきたので、入れ違いに僕は店を出た。

持っているジャケットであまり気に入っていないボタンのやつがあるから、それの替えでまたこの店を訪れそうな気がする。

f:id:guangtailang:20231224193130j:imageHさんの見舞いと書いたが、彼女は入院している。12月15日の朝、自宅1階で転倒して左ひざを壁に強打。左膝蓋骨の下面を骨折した。その一瞬間、骨の異音をはっきりと聞いたらしい。18日午後に全身麻酔による手術を受けて、現在は固定装具もはずれ、自立歩行のリハビリをやっている。回復は順調そのものだ。4人部屋だが、僕が痔の手術の時にいた2人部屋よりもカーテンでないちゃんとした仕切りもあって快適そうだ。

f:id:guangtailang:20231224193139j:image僕がほとんど毎日コーヒーショップにいる時、

f:id:guangtailang:20231224193134j:imageただ30分、ぼんやりしているだけで、他に何をしているわけでもない。