川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

壮年は長編を読む。

f:id:guangtailang:20210911151253j:imageふと点けたテレビでビル・エヴァンスの特集をやっていた。今でもたまに夜聴いたりする。仕事から帰って食事し、ウォーキング、風呂に入って、そこからがちゃがちゃした音楽や歌詞の意味が否応なく耳に入ってくる曲は聴く気にならない時もある。ビル・エヴァンスの音は探求する者には先鋭的でアヴァンギャルドなんだと思うが、ただ疲れた者にも沁みる。

そういえば神戸の祖母は酸素吸入を拒否していたはずだが、現在では積極的に使用して復活したらしい。その融通無碍さで明日、満93歳を迎える。広島で被爆し、阪神淡路大震災を潜り抜け、なんかやっぱ生命力が強いのだろうな。わたしが行ったことないような中国大陸の奥地にも、早くに夫が死んでから旅行している。兵馬俑も観光客が見られるかなり早い段階で行っていた。

f:id:guangtailang:20210911151303j:image客先から事務所に戻る逆方向なのに、無性にカーフェイジェリーが食べたくなって建物の地下へ。今日のアイスクリームはミックスにした。これと向き合ってさっと食べ、10分くらいで店を出る。わざわざ食いに来るのだからわたしはよほど好きなのだ。入院中も食べたいと思ったし。

f:id:guangtailang:20210911151310j:image今、『回想のブライズヘッド』(イーヴリン・ウォー)の下巻を読んでいる。すこぶるおもしろい。これは若い時に読むより、今くらいの年齢で読んでちょうどよかったと思う。基本的に語り手が冷めているというか冷徹というか冷静沈着というか、人生の疲労を滲ませているというか、諦観ないし枯淡の境地で回想しているから。イギリス上流階級的なのかな。盛り上がって参りました、と思ったらわりとスパッと切って次の場面に移ってしまう。大戦前は物凄い貴族のセバスチアンとまあまあ上流階級の語り手ライダーの仲睦まじい青春が上巻で描かれるが、下巻では一転、セバスチアンはアル中になり放浪、彼の家族も没落していく。このあたり、イギリス国教会が主流の中で一族がカトリックであることが絡んでいるのだが、日本人にはなかなか理解しにくい。場所の移動が頻繁だが、ヴェニスとかモロッコとか船上とか美しい描写がたくさんある。気の利いた表現もたくさんある。ただ、主人公に熱情的に感情移入したい向きはのりにくいかもしれない。これを読了したら『緑の家』(バルガス=リョサ)。分冊の長編を時間をかけて読むのが壮年のブームである。今年中に読み終わればいいというような調子で。

f:id:guangtailang:20210911193949j:imageウォーキングの帰りに雨に降られ、すぐ風呂に入った。ふと見ると洗濯機の上にわりと大きめの蟑螂が留まっており、すぐさまスプレーで冷却して葬った(洗濯機の裏に落下したから死亡確認はしていない)ことはHさんには内緒にしておこう。恐ろしがるから。