昨晩、華さんが寝ている横でJ SPORTSチャンネルにてハイネケン・チャンピオンズカップを観る。無観客試合とはいえ、選手の声が上がるからボリュームは小さめに。この大会はラグビーの欧州クラブ王者を決めるものだ。ASMクレルモン・オーヴェルニュ対ワスプス。前者にW杯日本大会でスーパーカーと呼ばれた松島幸太朗選手が所属する。だから見たということはある。ちなみに、コロナ感染者が出たため、不戦敗になったチームもあるという。
トライの瞬間はわりかしあっさりと訪れるのだが、両者譲らず終始白熱した試合だった。アイランダーはゴムまりのよう。
テストステロンの値の高い大男たちが野獣のように躰をぶつけ合う。 最後の最後に敵陣ゴール前で松島選手に楕円球がわたり、加速した彼をワスプスは止めきれず、トライ。劇的な幕切れだった。
ここのところどうも気力が足りず、映画も本もとんとご無沙汰で、なにかこれは男性の更年期障害の始まりか、年齢的にもなどと思わないでもなかったが、朝勃ちはしっかりあるし、まあ違うのだろう。それもテストステロンの値の高い男たちを見ているうちに元気が出てきて、自分なりの肉体鍛錬に励んでみれば、あらま不思議、映画を観ようという気も起るのだった。健全な肉体にこそ健全な精神は宿る。
小林薫がテストステロンの値が高い男かどうかは知らない。ただ、本棚に収納されて、目につき手に取ったDVDが『十八歳、海へ』(1979・藤田敏八監督・中上健次原作)だっただけだ。若い頃の小林氏の顔が好きなのだ。特にこの作品では役柄通りだが、屈折した内面が滲み出ていながら、こいつは信用できる男だという感じも漂う。
なんやかやあって主人公(森下愛子)の姉と夏休みにロタ島へ行く小林薫。天井扇がパタパタと音を立てて廻る下でベッドのふたりが汗ばんでいる。映画中のこの挿話が妙に気に入っている。初回に観た時、私も若かったが、浪人生が年上の女性と南海の小島でアバンチュールする展開に興奮したものだった。現実にはそれに似たことさえ何も起こらなかったが。八丈島でもよかったのに。
つづけてロマンポルノ、『OL日記 雌猫の情事』(1972・加藤彰監督)をFANZA動画で。中川梨絵の独壇場だった。ロマンポルノの一典型としてこの手の突飛な展開はあるが、中川さんの今の言葉でいう〈メンヘラ〉な言動は当時より現在の方がフィットするというか、理解が得られるんじゃないかと思った。70年代のネクタイ柄はかっこいい。
会社の屋上で奴凧を揚げて遊ぶ五條博の笑顔。この行いが素晴らしいのは言うまでもない。当時は昼休み、屋上でオフィスレイディたちがバレーボールをしたりなんかもあったのでしょうか。私の父親はまさにこの時代に社会人になった人間ですが、家業を継いだ彼は昼休み、奥の間に退いて飯を食い終わると、ひっくり返ってクルマの雑誌を読んでいたらしい。それが訪れた客から見えるという(家の1階、手前が事務所、奥が茶の間という造り)。
同じマンションに住む人間の飛び降り自殺を目撃してから何かしらのスイッチが入ってしまった中川。彼女に監禁された上司。ドアに頑丈な南京錠をかけられ、その鍵をベランダから捨てられた。しかし、脱出する方法はいくらもあると思うのだが(たとえば、ドアや壁をどんどん叩く、ベランダで叫ぶ等外部に助けを求めるとか)、積極的にそれらをしないのは、中川に対して憐憫の感情が芽生え、日本の南の小島でその母親とまぐわった記憶もよみがえり、彼女の彼を想う純粋さに報いようという気持ちになったから。