昨夜半から明け方にかけてすごい雨だった。ベランダの庇を叩く雨音に目が覚めてしまうほど。日中、雨は弱まったが躰がだるいので終日蟄居する。にっかつロマンポルノ、『ベッド・パートナー』(1988・監督 後藤大輔)をFANZA動画で。この映画についてはAmazonのレビューにぜんまいざむらい氏の達意のものがあるので、屋上屋を架すよりもそちらを引用させて頂こう。【以下、ネタバレあり。役名では呼ばず、俳優の名で呼んでいます】
にっかつロマンポルノ最後の作品
80年代後半急激に普及したビデオデッキとアダルトビデオに押され1988年にっかつはこの「ベッド・パートナー」と「ラブ・ゲームは終わらない」の2本を最後にロマンポルノの制作を終えると発表した。従ってにっかつロマンポルノ最後の作品と言って良いのが本作だ。主演の広田今日子もこれ1本しかロマンポルノに出ておらず、その後ビデオ作品にも出演したが姿を消した。ちょっと中森明菜のような雰囲気を持った女優だった。
話は仕事一筋で男と付き合ったことのないOLが同僚の名前を語り、男とセフレになる。やがてそれが同僚にばれ仕事を休むのだが、男はOLに思いを寄せていて再会する。要するに「ラストタンゴ・イン・パリ」「ナインハーフ」系のメロドラマであるが、この広田今日子の同僚役は元AV女優の高木陽子。なので、この頃のにっかつ作品はAV女優がAVではなく、官能ドラマをやっているといった感じで、エロさはそれなりにあるが、映画というよりはドラマに近い印象がある。
1988年の東京といえば、バブル景気の実感が燎原の火のようにひろがっていただろう。仕事一筋で会社初の女性係長まで上ったキャリアウーマンの広田今日子は、ひょんなことから部下で男遊びに長けた高樹陽子とともに出張中の男たちを相手にする。酔ってフェラチオを要求する男に対し、強がりから咥える広田だったが、男はその最中に眠ってしまう。部屋を出た広田の背後で赤いネオンライトがぼわんと光っている。
広田の住む部屋はモノトーンで統一され過ぎて実に素っ気ないと思う。無機質ですっきりしていいと思う人もいるのだろうが、女性の部屋なのだから。しかし、80年代後半(というかバブル期?)はたしかにこういう感じがもてはやされていたような気もする。
1988年の女子会。ファッションがダサいと見る向きもあるだろう。
これがさっきの出張中の男に対して虚勢を張っているところ。
これがさっきの赤いネオンライト。
部下の名前を語り、なりすまして長野修一と会う。調べてみたが、この人はこの一作しか出ていないようだ。素人臭くて、逆にそれがいい味を出している。ふたりが美男美女でないのもリアリティがある。
『ナインハーフ』(監督 エイドリアン・ライン)の日本公開が1986年で、その影響が明白だが、劇中でやたら氷を使用したプレイが出てくる。まあ、盗み見した高樹のプレイを広田が模倣しているということもあるが。裸で製氷皿を持っているのはなかなか滑稽だ。
会社の電話に私用の内容がかかってきて、それがきっかけでなりすましが生じ、物語が駆動した。無論、今であれば携帯電話で、というところ。携帯電話でもなりすましは発生するが、この映画の場合、男が午後5時15分にかけるからと言い、それになりすまされている本人が出てしまい、やきもきしながらファクシミリの陰で様子を窺う広田というダイナミックな構図が生まれている。
高樹の誕生日パーティに顔を出した長野が、広田のなりすましを知ってしまう。まあ、バレるのは時間の問題だったろう。バブル的乱痴気騒ぎをよそにカウンターでうなだれる長野。今や彼は広田に並々ならぬ好意を抱いているのだ。
「遊ぶんなら自分の名前で遊ぶのね。わかった? 夜遊び好きのお嬢さん」。会社の同僚たちの前で高樹に揶揄され、屈辱から会社を休む広田。やっぱり殺風景な部屋である。
最後は会社の会議を抜け出し、駆ける駆ける。なにやら80年代後半的な軽快でいなたいソングが流れて、例の噴水の場所に到ると暗くなるまで待つ。そこに最初の時と同じ封筒を持った長野があらわれる。はじめまして。自分の名前を名乗って長野と出会い直す広田であった。