川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

昨晩の事件

f:id:guangtailang:20180610192133j:imageそぼ降る雨の中、上野の新会所へ。皆が1品か2品つくって料理を持ち寄る会。Hさんも鸡胗 (鶏の砂肝)と黄瓜拌香菜(きゅうりとシャンツァイのピリ辛和え)を持って行く。おれはタダ飯を食べに行くだけの気楽な身分である。走り廻っている未就学児も含めれば総勢40人はいるかというような大人数で、料理の数も多い。ただ、女性が大半だからか、酒を飲む人は少ない。福建省の福清出身者をメインとした南方人(ナンファンレン)の集いと言っても過言ではない。

f:id:guangtailang:20180610192230j:imagef:id:guangtailang:20180610192246j:image新会所を後にし、アメ横センタービル地下で茘枝(ライチ)を箱買いする。旬だからおれの両親に渡したいとHさんが言うのだ。この頃には外は篠突く雨で、傘もひとつしかなく、茘枝の箱を持ち歩くのは難儀だと正直思ったが、「雨だからやめましょう」などと、彼女の気持ちを挫くのもよくないので。「ライチは中国の代表的なムクロジ科の果物で、茘枝(リーヂィー、レイシ)とも呼ばれ、福建省から広東省の中国南部が原産地といわれています。」(《旬の食材百科》より)。この「妃子笑」というネーミング、楊貴妃がおいしくて脣を綻ばせたみたいなことだろうか。

f:id:guangtailang:20180610192342j:image愁いの表情を浮かべながら外を見やる実家の柴犬。「雨だから散歩はやめましょう」「ボミワ…」。

f:id:guangtailang:20180610192415j:imagef:id:guangtailang:20180610192427j:imagef:id:guangtailang:20180610192820j:imagef:id:guangtailang:20180610192859j:image雨の勢いが弱まる気配を見せないので、父親が送ってやると言う。お言葉に甘える。御徒町附近。

それにしても、昨晩の新幹線車内殺傷事件。おれはかなりのショックを受けている。数年前にやはり東海道新幹線で、男が焼身自殺した事件があったが、あの時も自分でも意外なほど動揺した。手荷物や身体検査等の何らのチェックをしないまま乗車できる現在の新幹線は、ガソリンでもナタでも銃でも容易く持ち込める。そういえば、『アウトレイジ』(北野武/2010/109分)の中に、新幹線がトンネルに進入した瞬間にヒットマンサイレンサー銃でターゲットを撃つ、という場面もあった。だから、もし高速で走る密室に凶器を持った人間が乗り込んだら、という禍々しくも十分にあり得るシチュエーションは、折に触れておれの脳裡に去来しないでもなかったのだが、他方でいやそんな事態に遭遇するはずもないとノンシャランに構えて、やがて忘れてしまい、新幹線車内ではビールを飲んで眠り込んでしまうという無防備極まりない状態となる。しかし、これからは別の、確乎たる意識で乗車するだろう。

15時17分、パリ行き』(クリント・イーストウッド/2018/94分)として映画化もされたタリス銃乱射事件では数名の乗客の行動により、テロリストを制圧することができたが、勇気ある行動も一歩間違えば反撃に遭い命を落としてしまう。今回、凶行を止めに入り、亡くなってしまった梅田耕太郎さんのご冥福を心よりお祈りする。