川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

見つめる

f:id:guangtailang:20220404144522j:image雨空の街を見つめる女。それを見つめる男。大江千里「Rain」の気に入ったフレーズをボソボソと繰り返す。午前11時の開店と同時に入店し、焼肉のランチを食べる。Mはここの梅酒が好きで、ソーダ割りをゴクゴク飲むと、見る間に顔を紅潮させ、奥行きのあるまなざしを向けられたのは、調べてみると去年の7月5日だった。今日のペースはその時に比べるとだいぶ遅い。昨日は友だちと渋谷のホテルに泊まり、相手はお喋りしつづけ、寝たのが午前4時だったという。

ところで、〈消費〉と〈費消〉という前後ひっくり返したふたつの言葉がある。意味は少し異なる。手元の辞書によれば前者は〈①金・物・時間・エネルギーなどを、使ってなくすこと。②経済で、人が欲望を充足させるために財貨・サービスなどを使うこと〉、後者が〈金銭や物品を使い尽くすこと〉(明鏡国語辞典 携帯版)。もう10年も前から、わたしのような十人並みの壮年が女性と食事やその他をしようとすれば、そのためには当然金銭が必要だと思ってきたし、今も思っている。無論、金銭だけじゃなくコミュニケーション力、寛容さや決断力や共感力やヒューモアや我慢強さや、まとめていっそ精神と呼ぶような心の働きは必要である。こっちの方が大事だとわたしも考える。が、きれいごとじゃないと思うからやはりこう言う、金銭と精神が必要である。で、関係の中で男性は主に金銭を消費する。女性は主に時間とエネルギーを消費するだろう。男性が金銭を消費しているあいだはまだいい。が、金銭を費消してしまったら、これはえらいこっちゃということだ。破局が兆し始める。その後……。その手の話は枚挙にいとまがないではないか。だから、軽やかに消費することを常に心がけ、費消の穴に落ちぬよう注意しています。

f:id:guangtailang:20220404144956j:imageだいぶ前から週0か1出勤のAが会社に出る日をねらって、退勤後に秋葉原で夕飯。彼女が熊本の実家で妹たちから〈おねね〉と呼ばれていると知り、酔ったいきおいでやたらおねねを使ってしまう壮年。Aは結構酒が強いが、酔っている女性を見つめていたいから、わたしが先に酩酊してしまうわけにはいかない。遺伝的にALDH2の働きが弱く、アセトアルデヒドを分解しにくいわたしとリケジョのA。本人の前では言わないが、火の国の女であることも常に意識しつつ接しております。