川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

チートデイ

f:id:guangtailang:20210320194247j:image三年ぶりか、いやたぶんそれ以上ぶりだろう。細かいところはもうわからない。今年に入って彼から連絡をもらい、今は日本にいるのだと知った。以降、なかなか僕の都合がつかなくて悪かったのだが、今日秋葉原で会った。

ここ数年、彼は上海にいたり台北にいたり、僕と華さんがたまたま杭州で遊ぶ時に上海から高鉄で来て、合流したことがあった。雷峰塔に上ったあと、あの時はとんでもない雨に降られたのだ。西湖のほとりの四阿でぎゅうぎゅう詰めになりながら雨宿りしたのがいい思い出だ。

池袋の中文教室時代からの友人で名をシーシー氏としてしておこう。年は僕より10個くらい若い。177cm、68kg~80kg。体重に幅のある理由はのちほど話す。

f:id:guangtailang:20210320194305j:imageUDXビルに手ぶらであらわれたシーシー氏はほんの数週間会ってないだけのように変わっていなかった。こちとらは禿げ隠しにお帽子をかむっていったというのに。久闊を叙しつつ、Tシャツ姿の彼からかすかにネコ科の肉食動物のような危険な香りを嗅ぐ。

ふたりとも久しく鰻を食っていないということで、鰻重の竹を注文する。「今日はチートデイなんで、昼からいっちゃいますね」と生ビールの大ジョッキは彼、僕はハイボール。彼はなぜ減量ないしダイエットをしているのか。それは彼がブラジリアン柔術を習っており、試合にも出ているからだ。僕の記憶では彼は上海時代からやっていた。練習の帰り、上海の陋巷で見上げた鋭利な月に見惚れたとか、異邦人の寄る辺なさとともになかなかロマンチックなところがあった。

ふだん80kg手前らしいが、試合前に四週間で12kg落としてヘロヘロになったことがあるらしい。減量というのは最後は水分を抜くのだが、その前段階として塩分を抜くのだそうだ。それをやることによって水分が抜けやすくなる。ただ、気持ち悪くてしょうがなかった。夜も眠れなかった。ミネラルが不足するわけだから。35歳以上の青帯の日本チャンピオンになったことがあるという。現在は紫帯。茶帯、黒帯とつづき、ミッキーが巻いている黒帯になるには年月も要し、至難の業とのこと。危険な香りの正体はこれだった。身体の俊敏性が窺える。柔術は無論打撃系の格闘技ではないが、相手に組みついて巻きついて最後は首を締め上げて失神させる。試合でもないのにそんなことはしないと厳に戒めている彼だったが、それができるという可能性、俊敏性が危険な香りとして漂うのだ。

f:id:guangtailang:20210320194324p:imageエピソードをひとつ。シーシー氏の妻は台湾人である。そしてブラジリアン柔術をかじっている。そう、夫がやっているからちょっと体験してみたという程度だ。ある時、沖縄で柔術の大会が開かれた。上海時代の彼の先生と故山本‘’KID‘’徳郁氏が親しくており、ふたりによる共同開催だった。シーシー夫妻は当時台湾にいたので、近いしと旅行がてら大会出場を決めた。シーシー氏は試合をし、奥さんも青帯として試合に臨む。さて相手は、、、山本美憂だった。彼は思った。素人相手にオリンピアンレベル出てくるやん、と。腕をへし折られるかも知れない。彼は妻に出場を辞退させた。山本氏が青帯の試合に出てきた理由は、彼女はレスリングが専門であり、柔術に関しては専門ではないからとのことだった。

シーシー氏と別れたあと、僕も肉体鍛錬に励みたい気持ちがいや増した。

f:id:guangtailang:20210320205838j:imageおまけ。浙江省にて。シャオレイがショートカットにした店。