夜、そうだな午後10時を回ってから華さんが降りてくる。トイレじゃないとすれば、これは夜宵警察(イェシャオジンチャァ 夜食警察)だ。つまり、ダイニングでおれが夜食に何か食ってはいないかパトロールに回ってくる。ところが、わりかし重めのダンベルを購入して以来、重さをあれこれ調節しつつ、おれは肉体鍛錬をしている。ここ最近はyamaや懐かしのBONNIE PINKを聴きながら。せっかく効果があらわれつつあるのに、元の木阿弥になったら厭だから夜食は食わなくなった。にやりとしながらシャツをめくり、引っ込み始めた腹を見せると華さんに褒められるし、ダイエットで健康にもなるし一挙両得なので、おれはこの生活を持続したい。
ちょっと前までたしかに夜食を食っていた。ビールを飲んだりウイスキーを舐めながら。夕食の残りに手をつけることが多かったが、ひどい時は非常食で買っておいた缶詰まで開けた。さすがに我ながら情けないなと思いつつ。胃が大きくなっているのだ。そこに脚の治った華さんが素早い動きでパトロールに回って来る。食べ物飲み物を隠す暇などないし、そもそもこのだらしのない姿を晒したいという奇妙な欲望があった。叱られたかった。しかし、さすがに不健康に過ぎると反省し始め、肉体鍛錬へと傾斜していった。さっきダイエットと言ったが、考えるに体重を減らすということにはあまり重きを置いていない。事実あまり減っておらず、現在87kgだ。しかし、体型は変わってきている。ボディメイクなどとおっさんが言ったらしゃらくさくなってしまうから肉体鍛練(華さんにも锻炼身体 ドゥアンリェンシェンティ)と言う。ラグビーのトップリーグを見ていると、90kg、100kgの選手でも腹など出ていない。むしろ筋肉の鎧を纏いつつ俊敏に動き回り快足を飛ばしている。ああゆうのが理想だ。無論この年であのレベルになれるわけはないが、頭は禿げてもいい(お帽子をかむればいい)、筋肉をつけながら脂肪を落としたい。朝起きて顔がぶちゃむくれているということもとんとなくなった。これからの季節、半袖にもなるわけだから木樵運搬トラクターの似合う厚い胸板、太い腕を手に入れたい。