川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

飛び退った八月

暑い暑いと皆と言い交わしているうちに八月が終わってしまった。今日も東京の最高気温は34度。まだ夏は終わらない。

f:id:guangtailang:20230831101411j:image国語学習会に出る前にFさんとHさんが寄る中国物産店がこの昭和の小道にある。私もいつしか寄るようになった。主にココナッツジュースを買う。30手前くらいの大連出身の娘さんがやっている。あとから来た夫は丹東出身で彼女のようには日本語が話せない。Fさんはこの店のオープン前日に娘さんに声をかけて、得意の諧謔を弄した弁舌で親しくなっていったらしい。ある時Fさん、Hさんと私で娘さんと雑談して、何個かの単語が通じず、何度か発話して、それはこうね、と四声を直された。こういうのが楽しい。

f:id:guangtailang:20230831101404j:imageまたある夜、綾瀬で待ち合せをして花蓮出身のママがやっているカラオケパブにFさん、Hさんと一緒に行った。最近は彼らとばかり行動しているんだなと言われれば、それは彼らが好きだからと答えるしかない。Fさん80手前、Hさん60半ば、私47と年齢はまちまちだが、中国語を介して繋がって、人間として影響し合っている。毎週火曜、彼らに会うのが待ち遠してくてならない、それで今やお誘いがあれば火曜日じゃなくても会いに出かけていく。Fさんの入れ歯の具合で特定の音が出ない滑舌を補ってあまりある諧謔、Hさんのたとえば「明明就(ミンミンジョウ)」(周杰伦[ジェイ・チョウ])歌唱時にあらわれる切なさ、謙虚さと几帳面さが入り混じった人となりにまた会いに行く。

f:id:guangtailang:20230831101348j:image綾瀬駅前。ある夜店に行くと、ママの知り合いでたまたま日本に滞在しているという台湾人の女の子を呼んでくれた。FさんHさんとは既知の間柄らしい。私が出身地を問うと台北とかではなくナントカと言ったが聞き取れなかった。それで彼女が〈高雄のもっと南、いちばん南よ〉と説明してくれ、屏東(ピンドン)だとわかった。Hさんとデュエットして歌が上手かった。私はパイナップルケーキをハイボールで流し込みながら聴いていた。Fさんは〈今日のマイク、なんかいいんよ〉とご満悦だった。帰り際、ママがティーバッグのおみやげをくれる。

f:id:guangtailang:20230831101344j:imageある土曜日、Mと会う。今や彼女も大の羊肉ファンで私が食いに行くかと誘ってノーと答えることはない。40を越えて躰の老いをよく口にする彼女だが、家の猫がまた一匹増えたらしい。鳥取から来た黒猫だ。10月にハーフマラソンに挑戦すると言うから、いきなりムチャせず徐々に距離を伸ばしていった方がいいと助言する。おれはそれで鵞足炎になったんだから。爾来、走るのはやめてウォーキングにしたわけだ。あとシューズもちゃんと足に合ったやつを履いて。きみの美しいギリシャ型が痛んでしまうのは忍びないから。殊勝に聞いていた。

f:id:guangtailang:20230831101400j:imageある夕方。めったに行くことのないソラマチに焼き餃子を食べに行く。来るたびに感じる、空虚な場所だ。近すぎて遠すぎて、まだ上ったことはない。

f:id:guangtailang:20230831101356j:image夏休み、Hさんと山梨に一泊旅行。桃を買い、シャインマスカット狩りなど楽しむ。泊まったホテルのホスピタリティ、窓からの眺望は素晴らしいものだった。

夕食時、服務員の大柄な人の日本語はほぼネイティブだったが、訊いてみると大連出身で、もう30数年こっちで暮らしているらしい。

新日本夜景とかナントカ、甲府の夜景は正直たいしたものとは思えなかった。

そのホテルが立地する丘のさらに上に横溝正史館はある。それがなんと、朝夕二回行ったが閉館、よくよく掲示を見てみると土日しか開いていないのだった。残念。

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