明け方に夢をみた。母親が出てくる珍しいものだ。昔住んでいた川沿いのマンションの一室とおぼしき部屋に布団を敷いて母親が寝ている。彼女もおれも実際より若返っているようだ。朝の早い時間だと思うが、おれはすでに起きており、ベランダに行くとそこにはなぜか乳牛が一頭座っている。グレーがかったような色の牛だ。黒い大きな飴玉のような目をしている。ベランダが随分広がっているようだ。周囲に藁草があるような感じはない。鼠色のコンクリートの殺風景な中に牛がいる。おれはそいつを立たせて乳を搾り始める。が、なかなかうまくいかない。すると眠っているはずの母親が声だけでベランダのおれに指示してくる。その内容は忘れたが、その通りにすると牛のおっぱいから白い液がほとばしり出た。
成都で開催されていた世界卓球の女子団体。今は結果がわかっている。決勝は日本対中国で、天才の貌をしている伊藤美誠選手が王曼昱選手からかろうじて1セットを取ったが、あとは素人目にも全く勝機が見出せず完敗した。日本も他の国相手だと圧倒するのだが、中国との力の差を非常に感じた。ちなみにおれの妻は浙江省生まれの中国人だが、テレビの世界卓球決勝を一緒に見るか訊いたところまるで関心がないらしく、画面を一瞥すると〈中国が強い競技だね〉と呟き、階上に去った。仰る通りだった。
ところで、男子団体も準決勝で中国に敗れたものの張本智和選手が2勝をあげ、なかんずく世界ランキング1位の樊振東選手を破って常勝軍団を脅かしたらしい。友人Jはそこから帰化選手の〈ナショナリズム/アイデンティティは、ヂョングオか小日本か、というところは気になりますね〉と呟いた。張本選手に限らず、卓球はヂョングオルーツの帰化選手が各国の代表になっている。張本選手は生まれが仙台だったはずで、小学生の時に帰化したのだったか。小日本(シャオリーベン)は勿論日本及び日本人に対する蔑称だが、これを自らリトルと名乗る富田林出身の日本人Jが言ったところに諧謔が存する。
休日。またもMとみじんこに行く。今回は番号札を取る機械が故障しており、店員が手書きの紙をくれた。近所の猫の額公園で連絡を待つ。隣りに新しそうな分譲マンションが建っていて、エントランスを頻繁に人が往来する。皆若い(30、40台)が、億前後するであろうこのマンションの一室を買っているのだ。35年ローンをギチギチに組んでなのか余裕でキャッシュでなのかわからないが、距離にすれば10kⅿも離れていない普段仕事をしている世界(エリア)とあまりにかけ離れていて不思議な気がする。
みじんこではふたりとも前回と同じメニューをたのんだ。Mはアンニュイな様子だったが、そのわりによく喋った。こちらからいろいろ問いかけて、彼女独特の視点と言語表現で返してくるのをいつも以上に楽しんだ。事故物件の話が盛り上がったな。臙脂色のセーターがよく似合っている。金髪は假屋崎省吾みたいだ。