川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

タッチパネル

f:id:guangtailang:20221016225221j:image午後から池袋で仕事があるというHさんに、じゃあその前に火焔山で蘭州拉面と羊肉串を一緒に食おうと誘い、電車を乗り継いで久々この街に降り立った。彼女がいつも最短距離で店にたどり着けないと言うからおれが前を歩く。すると、遠目にもなにやら店の様子がおかしい。明かりは点いているが、中ががらんとして活気が全然ない。コートの襟の上からHさんの首の後ろを揉みながら一緒に入口まで近づいた時、同じ言葉が口をついて出た。〈在装修!(ザイヂュワンシゥー 改装中!)〉。男がひとり木工事をしている。

それで、じゃあどこにすると彼女に訊くと、太陽城にも羊肉串があると言う。近いというからそこにしようとなる。細かな電飾で飾られているが薄暗い店内には客がいないようだ。とみると、窓際の席で初老の男と中年の女が鍋を食っていた。苦虫を嚙み潰したような表情の服務員の女に案内され、席に座る。注文はタッチパネルなのだが、Hさんはハナから投げて、あなたがやってという感じ。こういう画面だと料理の写真にばかり目がいき、名前を覚えようとはあまりならないんだな(発話する必要もないわけだし)。彼女がナントカ餅(ビン)を所望し、見つけられなかったのでさっきの服務員を呼ぶと、眉間に皺を寄せて不機嫌そうに〈主食のところにあるでしょう〉と対応する。昼には早い時間で、向こうの席で服務員同士飯を食っているのは別にいいのだが、このホスピタリティなき態度にはゲンナリさせられる。慣れている方なのだが。たのんだ錦州羊肉串(10本セット)も上のようなもので、もっとうまい店は他にいくらもある。

f:id:guangtailang:20221016225236j:imageある休日。数ヶ月間母親には会っていなかったが、久々に4人でランチを食う。彼女も外食できるまでに躰の状態がよくなっている。実家でウィッグをはずし、〈ほら、今こんなだから〉と見せられた頭は短い銀髪だった。黒くない彼女の髪を見たのはこれが初めてかもしれない。それでもここまで生えてきたのだからと。

東京に店舗の少ないかごの屋のオーダーもまたタッチパネルだった。〈これが複雑でさ〉と機器に触る気配のない父親にかわって注文する。〈〇〇ちゃんがやったらすぐじゃない〉と母親に褒められる。飲み物は配膳ロボットが運んできて、Hさんが喜ぶ。土瓶蒸しの食べ方にまごついている彼女を母親が手伝ってやり、おいしいと言えば、〈これ関西の味ね〉と母親。Hさんがキョトンとしているので、〈グアンシーの味道だって。薄いだろう〉と大雑把にフォローする。

店を出たあと母親と立ち話していたHさんが急に近づいてきて、自宅からいちばん近いこの店はどこにあるかと問うから、調べると竹ノ塚だった。それで〈北千住のもっと向こうにあるね〉と答えた。母親がいいと思うものを真似したがる彼女。今度はこっちのエリアでご馳走しようと考えたような。

f:id:guangtailang:20221016225245j:image料理の名前は憶えていないが、先週食べたものの中でいちばんうまかった太陽城の涼菜(リャンツァイ)。ボリュームもすごい。