川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

假面をかむる

f:id:guangtailang:20210218233238j:imageある日。野暮用で都庁第二本庁舎に行く。晴れ渡っているが、風は冷たい。そろそろ花粉で目が痒い。大江戸線プラットホームへ下りてゆく深さ、これはTX線で秋葉原に行ったりするから慣れているが、車内の狭さにはあらためて驚く。現代日本人の体格からしても小型だが、もしオランダ人だったらちょっとこども電車に乗っている気分だろう(世界最長身のオランダ人の平均身長 男性184cm 女性171cm)。

f:id:guangtailang:20210218233247j:imagef:id:guangtailang:20210218233258j:image別の日。野暮用で法務局の出張所に行く。その道すがら、石川佳純選手ことかすみんの曇りのない笑顔に出会う。近頃、低空飛行がつづいているからこうゆうのがささやかな喜びですよ。また別の日。事務所でこどもりんごジュースを飲む。

f:id:guangtailang:20210218233306j:imageある晩飯後。デザートなのか、これでも食べればと棒を渡された。これは何ですか? 甘蔗です。こうやって食べます。と、華さんが茄子色の表皮を歯でどんどんひん剝く。そして中の黄色っぽい部分を噛み、水分がなくなった繊維をぺっと吐いた。ほら、やってみなさい。と言うが、野性を取得しないとなかなか食えない代物だ。それでもおれも真似た。節のところまで容易にひん剝ける。中身のじゅわっと滲み出す水分は天然の甘さで、わずかに酸味が感じられる。ぺっ、ぱっとやっているうち皿に噛み終わったサトウキビの繊維があふれた。

f:id:guangtailang:20210219211507j:imagef:id:guangtailang:20210219211528j:image久方ぶりにテレビの音楽番組を観る。橋本愛が自らが生まれる20年以上も前の「木綿のハンカチーフ」を歌っていた。その歌唱については特筆すべきところもないが、シャープな横顔の美しさに瞠目する。なにせ本日のメインイベントはyamaさんと言っていいだろう。同業の後輩が去年から「春を告げる」にやたら言及していたので知っていたが、本人は極端に露出を避け、番組内でも素顔を晒さぬよう假面をかむっている。その假面のデザインがまたいい。YouTubeで何度か聴いたその特徴ある歌声。最初、男女の区別もつかなかった。やや緊張のみえるパフォーマンスではあったが、惹きつけられるものがある。

個人的に假面には関心があり、ときたま友人からもらったヴェネツィアの假面をかむって洋服を整え声色を変えてみたりしている。また、「江戸川乱歩の美女シリーズ」は言うまでもなく、中国の〈变脸(變臉)〉の動画もよく見ている。ちなみにこれ、日本語で〈変面〉と表記するが、面だと麺になっちゃって変だなあと思っていたら、以下のようなことらしい(簡体字)。

…中国映画『變臉 この櫂に手をそえて』では、臉(れん)の字が日本で一般的ではないことから敢えて「めん」と読ませている。そこから「変面」(へんめん)という表記が派生しているが、正確ではない。

 Wikipedia

f:id:guangtailang:20210219181157j:imagef:id:guangtailang:20210220155722j:imageある日。浅草をぶらぶらする。昼飯を食べたフロアのトイレから新仲見世のアーケードの屋根が見えた。華さんから催促されても龜十の行列に並ぶ気はない。

f:id:guangtailang:20210220204932j:image假面と覆面の違い。仮面はペルソナに係わる。つまり、当然に素顔を隠すのだが、そのこと以上にかむった〈役〉を演じるということ。覆面は素顔を隠すことそれ自体に主眼が置かれている。だから、古今東西伝統芸能や儀式で使われているのは假面、犬神佐清がかむっているのは覆面、パトランプを装着して、あ、覆面パトカーだったかと思う。