川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

まどろみ電車

2月の中旬でこの暖かさ。海沿いの芝生でフリスビーでも投げたいなあ。そのあと附近の店で海鮮でも食って。ドライブがてらに音楽を聴くというのも久しくやっていない。

f:id:guangtailang:20210214153748j:image虚空をひゅるひゅると回転しながら向かってくる円盤を千住の空に想像することはできなかった。ただ、複雑怪奇に張り巡らされた電線があるだけだ。昨日の夜半に大きな地震があった。震源はまたも福島県沖で、最大震度6強が観測された。東北ほどじゃないが、東京もそこそこ揺れた。僕は2階で腹筋ローラーを何度か転がし、地べたに仰臥していたから直に揺れを感じた。長いな、と思った瞬間、3階で華(ファ)さんの声が鋭く僕を呼んだ。慣れているといっても、地震の揺れに日本人ほど慣れているわけじゃない。上っていくと、ベッドの上で半身を起こした華さんが「怖いよ、ここ」と顔を少し歪めて言った。落ちつかせるため、「たしかに長い。でもこれくらいは大丈夫」と頷いてみせた。それからまだしばらく揺れていた。ツイッターの情報を確認し、つづいてテレビを点けた。家の中で特に落下したものはなかった。

f:id:guangtailang:20210214153757j:image華さんが安眠できずにうんうん唸る横で僕も何度か起きてしまい、まともに眠れなかった。それでも翌朝、彼女は用事があると西川口に向かった。僕はあてどもなく北千住駅から東武線に乗った。車内は閑散としており、柔らかい光が差し込んでぽかぽかしている。新越谷あたりで降車しようと思っていたがまどろんでしまい、気がつくとせんげん台だった。なんとも心地よい電車で、このまま揺れに任せて目を閉じていたかったので、いっそ終点の久喜まで行こうと決めた。

久喜は「山月記」でおなじみ、中島敦ゆかりの土地で、西口の公衆便所の脇に案内板が立っている。どなたかが仰っていた〈漢文脈最後のスパーク〉という表現が僕のお気に入り。

f:id:guangtailang:20210214154020j:image帰りの車窓から見た風景。NHK大河ドラマが始まるからだろうが、車内のモニターで繰り返し深谷の旧渋沢邸でアンドロイドの渋沢栄一が動く場面を映していた。最晩年の渋沢さんかしら。何年か後には一万円札の肖像にもなる渋沢さん。勝手なことを言うけれども、五百円札を復活させて河井継之助の肖像にしたらどうです。岩倉具視よりいいし。二千円札なんて妙ちきりんなものが出回ったくらいですから。裏面は源氏物語ですよ。いや、源氏物語は圧倒的に凄いんだと思うんだけど。そんなら、五百円札の裏面はガトリング砲だよ。

f:id:guangtailang:20210214173905j:image上野駅構内で鯖ずしを買う。UP-BEATの「Rainy Valentine」を聴く。1990年リリースということは、30年以上前の曲かよ。怖いね。

f:id:guangtailang:20210215215717p:imageおまけ。華さんの妹の夫、スンジエンファ。以前、妹さんから西装があれば譲ってほしいと言われ、肥えて着られなくなったやつを送ったのだが、この春節のタイミングでこのように着たか。抄太郎は嬉しいです。