父親と私のふたりで旅した最後が2006年10月の国師ヶ岳ということを先日書いたが、では、母親とふたりきりで旅をした最後は、と調べてみるとこれがやはり2006年3月のことだった。旭川である。
なぜ旭川に行ったかの理由は明確に憶えていて、今ではさほど珍しくもなくなったが、その頃旭山動物園の行動展示が持て囃されており、その中のペンギンの散歩を母親が妙に見たがって、独りで行かせるのもなんなので、暇だった私も付き合ったのだ。ふたりともそれまで旭川の地を踏んだことはなかった。
そのペンギンの散歩を見ている時、急に吹雪き始めた。
瞬く間に雪は積もり、かつて雪に滑って転倒し尾骶骨にひびをいれたことのある母親はさっさっとロッジに避難してしまった。私はアメリカの極寒地作業員が着用するというもこもこのジャンパーを着て、吹雪のなかを歩き廻った。途中、ホッキョクギツネが檻の中ではしゃいでいるのが眺められた。寒さに圧倒的に強く、マイナス70℃でも少し寒がる程度らしい。