川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

ダルメシアン、イカ、ポスター

f:id:guangtailang:20210307192213j:imageある雨の夜、目白駅の周辺をさまよっていた。池袋から歩いてけっこう濡れる。人混みの中をターミナル駅まで戻る気分じゃなかったから、線路づたいにとぼとぼ。帰国の目途が立たず息子の結婚式の準備をしてやれないし、初孫の誕生の場面にも、今のところ成長の場面にもそばにいてやれない。WeChatの画面を通じて見るのがせいぜいの現状だ。孫に触れることすら叶わない。気の毒なことだとおれも思う。これだけ長引いて物事が何も進んでいないと、さすがに彼女も露骨にいらいらしてくる。それがおれにも伝播してこちらもいらいら。日常生活におけるくだらない売り言葉に買い言葉。ベッドで背中を向け合いながら、あれはさすがになかったな、いやでもあんまり横暴だから…と悶々として夜を明かす。

f:id:guangtailang:20210307192246p:imageふたりで乾いた言葉をこすり合っていてもしょうがないので、休日、両親と犬を誘い、つくばに出かける。彼らの行けつけというペニーレインつくば店で昼飯をご馳走になる。ここは犬を連れて食べられる。気温の低い風の冷たい日だったが、ドッグランが見える屋外の席に座る。きれいな若いダルメシアンがいた。犬がいれば笑いが生まれる。欲望に忠実だからだ。

f:id:guangtailang:20210307192233j:imageペスカトーレ、ハンバーグ。犬たちの鳴き声を聞きながら。

f:id:guangtailang:20210307192259j:imageシーフードパエリアとカレーとパン。犬たちの躍動を眺めながら。

f:id:guangtailang:20210307192312p:image母親と彼女は商業施設に買い物に、父親はクルマで移動した先の公園で犬と散歩へ。おれだけがなにやら手持無沙汰になりそうだった。途中まで女たちと行動をともにし、3階の赤ちゃんコーナーへ。そこで目に留まった嬰児の歯固め用のイカのかたちをした玩具を買う。指で押すと甲高い音がする。それをピーピー鳴らしながら周囲を徘徊する。呼子イカは透明だけど、これは黄色がかった白色だよ〜。階下に行くと、女たちがカートにモノを満載している。彼女が「とてもシンシェンですよ」と喜ぶ。

f:id:guangtailang:20210307192347j:image時間はまだ午後2時過ぎ。父親の提案で利根水郷ラインを走って佐原へ。曇天で寒風が吹き、一応緊急事態宣言のさなかということもあってか、人はまばらだった。父親が店頭に貼られた大判ポスターの前で足を止める。そこには日本列島を衛星写真で撮った地図と、200年前に伊能忠敬が測量してつくった地図が上下に並べられていた。後者のその驚異的な精密さには誰もが目を丸くするだろう。おもむろに父親は入店し、厨房から出てきたおばさんと少しやりとりすると、ポスターを2枚と伊能先生に関連する冊子を一冊買った。

帰り、東関東道。酒々井でトイレ休憩。人名と地名はそう読ませるということでしかないと思う。