川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

70年代釧路

日活ロマンポルノ『さすらいかもめ ―釧路の女(ひと)―』(1973・西村昭五郎監督)をDVDで。神経が疲弊しているため感想もろくに書けず、ほぼ映像を羅列するだけになってしまいます。70代初頭の釧路の街や港、阿寒湖のアイヌコタンが見られたことで、気分転換になりました。【以下、役名ではなく、俳優の名で呼んでいます】

f:id:guangtailang:20201001215245p:plainフェリーの中、頬杖をつく宮下順子。東京で男関係で何かあったらしく、郷里に帰る途中。この時代、東京〜釧路を結ぶフェリーがあったんだな。今は大洗〜苫小牧か。しかしなぜ、東京〜苫小牧でないのか。それは房総半島をぐるっと回るのがかなり時間のロスになるからでしょ。速度も出せないらしい。時間があればフェリーの旅がしたいよちきしょう。

f:id:guangtailang:20201001215432p:plain寝床の高橋明と二條朱美。インテリアも相まって昭和の大人臭さが漂っている。

f:id:guangtailang:20201001215501p:plain片桐夕子の家の入口。寒いだろうにこんな建付けでよいのかしらと思うが、姉弟ふたりの暮らし向きの良くないのをあらわしているだろう。

f:id:guangtailang:20201001215545p:plain釧路港宮下順子。猥雑空間に女優を立たせること。

f:id:guangtailang:20201001215616p:plain宮下順子さんと片桐夕子さんはロマンポルノのスタアですよね。おふたりが1973年の釧路にロケした本作に出られていることが価値です。

f:id:guangtailang:20201001215644p:plain1973年の幣舞橋。なんか街も港もかなり活気があるように見えるんだ。それで釧路の人口推移をみてみたら、1980年が22万7千余でピーク、73年も20万人を超えている。2020年は16万6千。ただ、人口だけでない高度成長期の勢いを感じる。

f:id:guangtailang:20201001215723p:plain片桐夕子が哀しい女を演じている。化粧もろくにせず、ちょっとおぼこい。「哀」という字は口に布をくわえて、内に秘めたかなしみをぐっとこらえているというけれど… 痛々しいの感じあり。

f:id:guangtailang:20201001222005j:imageこれは「映画芸術 No.384」(1997)の藤田敏八追悼号に載っているエピソード。ビンパチが師と仰いだ蔵原惟繕が喋っている。西村昭五郎がロケに行って留守のあいだ、藤田が西村の妻と関係を持った。藤田は会社を辞めるつもりだと噴水の前で蔵原に漏らしたが、藤田・西村両者の人間と才能を買っていた蔵原はなんとか取り計らう。すると、藤田は女と北海道に行ってしまった。すわ駆け落ちか。だが、しばらくすると帰ってきた。その後、西村と藤田がダビングルームの前でキャッチボールしているのを蔵原は見かけた。 

Wikipediaに書かれているが、西村は試写会やイベントで人前に出る時、常にスリーピースを纏っていたという。藤田も、顔の雰囲気もあるが、数々の写真をみるとカジュアルで洒脱な着こなしをしている。一見、対極的なようでふたりともスタイルを持っているんだ。

藤田も蔵原も西村もそれぞれの生を生き切った。