川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

連休中の本と映画、それは満洲とロマンポルノです。

何日か前、ツイッターで目にした記事で、長野県が県外ナンバーのクルマの実態調査に乗り出しているというのがあった。写真が載っており、背に「長野県建設部」とある赤いベストを着た職員が、道路脇のパイプ椅子に座って往来を走るクルマを監視している。連休を睨んでの行いらしいが、自治体自らがこれはやり過ぎだと思う。県民が県外ナンバーを見て、なんだよ来てるよ自粛せえや、と感じるのとはわけが違う。緊急事態宣言はあくまで自粛を要請しているに過ぎない。だのに、長野は税金を使ってこうゆう陰険なことをやるのかと、カテゴリーに「信越」をつくっている僕としても気持ち悪くなった次第です。

f:id:guangtailang:20200429133804j:imageひとり、荒川沿いを自転車で走る。速いバイシクルが多い。虹の広場はかなりの人出だ。しかし、河川敷だから人と人との距離は何メートルもある。

f:id:guangtailang:20200429141356p:plain数日前。『ズームイン 暴行団地』(1980・黒沢直輔)をFANZA動画で。全編、炎のイメージ(映像)に彩られたサスペンスで、それほどのこともないが残虐描写もある。全身黒ずくめの調律師は、ハンマーフェルトピッカーを落としたりしていかにも怪しげだが、犯人はこいつじゃないだろうと思いながら観ている。案の定、そうだった。造成中の団地や上のような平野が荒涼として乾いた印象をもたらす。

f:id:guangtailang:20200429141430p:plain宮井えりなさん主演。けっこうサスペンス向きなのかもしれません。

f:id:guangtailang:20200429141526p:plain昨日。『鏡の中の悦楽』(1982・西村昭五郎)をFAZNA動画で。10分に1回どころか、全編にわたって濡れ場がつづく。しかし、これが飽きない。主演の朝比奈順子さんの素晴らしい肢体の魅力もあるが、義弟役の小林宏史の好演もあると思う。背徳感がいや増していく。上はふたりがまぐわっていると家政婦が忘れ物を取りに戻ってきて、急いでテーブルの下に隠れながらも抱き合ったまま。レビューでどなたかも書いておられるが、このような主題、全編濡れ場ということでAVと比較すると、ロマンポルノの味わいがよくわかる。

f:id:guangtailang:20200429141648p:plain朝比奈さんは祖父がロシア人のクォーターとのこと。言われてみればそんな感じする。

f:id:guangtailang:20200429142044j:image『赤い月』(2001・なかにし礼)、『けものたちは故郷をめざす』(1957・安部公房)、読了。この連休中は「満洲もの」の小説を読むつもり。尚、満洲からの引揚者が書いたものに限定して。【以下、ややネタバレあり】

『赤い月』は最初の章でいきなりロシア美女の生首が飛ぶショッキングな展開。各章を入れ替えても話は通じるから、これを第一章に持ってきたのは構成上の綿密な計算によるものなのだろう。するする読めて整ったというか、達意の文章なのだが、棄民の艱難辛苦の逃避行よりも波子の愛とロマンが断然伝わってくる(なにせ氷室がカッコ良過ぎる)。彼女がエゴイストだとしても、人間これくらいのことはあると思った。一方、『けもの~』は棄民の極限的逃避行が延々と描かれ、満洲の寄る辺ないだだっ広さがひしひしと伝わってくる。安部公房は大昔に『砂の女』を読んだ程度だが、比喩が巧みで生々しさが活きている。それに、久三と高のサバイブの中に諧謔が滲む(野犬との追いかけっこにはニヤニヤしてしまった)。ただ時々、読み返さないとイメージが浮かばない描写がある。

f:id:guangtailang:20200429133844j:image昔、千住に住んでいた頃、通勤で使った道を久しぶりに通ってみた。