霧の公園にいる。ここは東京ではない。向こうに灯台が見える。耳をすませば波の音も聞こえる。湿り気をおびた風が気持ちいい。手前の芝生で子供がじゃれあい、父親がおいおいいい加減にしないかと寄っていく。灯台の脇まで来ると女がベンチにバッグを置いたので、わたしもリュックから紫色の円盤を取り出し、距離をとった。柵の後ろの生い茂った草木はすぐ断崖になっているらしい。灯台の建つ霧の公園でフリスビーを投げる。ここは東京ではない。
20分ほど投げ合うと汗ばんできた。湿り気をおびた風が気持ちいい。いつの間にか霧が晴れて、しばらくのあいだ陽光が降り注ぎ、芝生が輝いた。そしてまた分厚い雲に覆われた。灯台外縁の階段を上り、地上よりやや強い風に当たりつつ、ベンチで休息する女を撮った。後方の生い茂った草木の向こうは海なのだが、空との境い目が判然としない。ただ、目隠しされて連れてこられても、聴覚と嗅覚によりここが海のそばだとわかる。松林の方まで散歩して戻ってくると汗はすっかり乾いていた。切り株に傘のでかい立派なキノコがいくつも生えていたが、色がなんとなく気色悪かった。
日立おさかなセンターの2階で海鮮の昼飯。通路を隔てた向こうの席に高校生くらいに見える女の子4人組が座っており、皆やはり海鮮丼を食べていた。年齢にしちゃ奮発したものだと思う。彼女たちのお喋りは止むことがないが、その頃また射してきた陽をガラス越しに浴びて、逆光のポートレイトのように横顔が美しく陰翳されていた。
メヒカリの唐揚げは頭も骨も食べられる。レモンをかけるかけないは無論自由だ。女が気に入ったらしく、むしゃむしゃ食べていた。
日立の道の駅で土浦の観光広報をやっていて、パンフレット一式をもらった。つちまるの耳はレンコンになっている。故三浦春馬氏や栗山千秋氏、「Get Wild」などTM NETWORKの楽曲に多くの詞を提供した小室みつ子氏が土浦出身であることを心に留めたい。ところで、クラブに〝倶楽部〟の漢字をあてたのは福建人で、これは福建音由来なのだと司馬遼太郎が書いている(『街道をゆく25 中国・閩のみち』より抜粋撮影)。
相変わらず白濁した空からぽつりぽつりときて、常磐道を東京に近づくほど雨脚が強くなった。午後4時頃帰宅。