川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

切なさとだらしなさと

午後から晴れた。が、またぞろ台風が発生したらしく、その14号ヤギの進路が、僕が飛行機に乗る日まさにその空域を目指しているようなあんばいなのだ。困ったなあ。

f:id:guangtailang:20180809214420j:image会社をやめた恵子(山口百恵)が友人と不倫する元上司の岩淵(津川雅彦)に、「家庭にお戻りなさいよ。その方がいいと思う」と忠告し、「利いた風なこと言うなよ」、ギロッと睨みつける岩淵。テーブルに置いた拳を握りしめる。それをみた恵子が、「ぶつんですか? わたしもうあなたの部下じゃありませんよ」と決然と言い放つ。まあ、部下であろうとなかろうと、ぶったら現代では大問題だが、これはまた違う時代のお話。f:id:guangtailang:20180809234406p:plain視線を落として、「悪かったよ」としょんぼりする岩淵。不倫相手の女性が逐電し、元々元気がない。f:id:guangtailang:20180809234531p:plain「失礼します」と、ろくすっぽ料理に手も付けず席を立つ恵子。「じゃあ、また」というように口を動かす岩淵。恵子の恋人、上杉(三浦友和)と大立ち回りを演じ、披露宴をめちゃくちゃにし、会社から左遷を言い渡されている。f:id:guangtailang:20180809234708p:plain独り残され、店の片隅で飯をぱくつく岩淵。去る8月4日、78歳で亡くなった津川は、この映画『天使を誘惑』(藤田敏八監督/1979/109分)の当時、40くらいだ。中年男の狡さ、切なさ、だらしなさ、愛らしさ、滑稽さを巧みに演じている。f:id:guangtailang:20180809234738p:plain