川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

白いチェスト

f:id:guangtailang:20171219211501j:imageHさんの朋友が神田に借りていた部屋を引き払って、米国に住む老公のもとに行くという。というか部屋には家財が一通り残されたまま、軀はすでに米国にあるのだ。朋友曰く、使うものがあったら好きなだけ持っていって。Hさんは嬉々として神田のマンションに向かう。といって、ひとりで行くわけではない。私にクルマを出せというのだ。気に入ったものは即座にクルマで運搬しようという算段だ。私は気乗りしなかったが、Hさんが畳み掛けるので、不承不承クルマを出した。車中、家電はダメだぞ、と念を押した。私たちの部屋にある家電は、冷蔵庫にしろ洗濯機にしろ電子レンジにしろどれもまだそんなに古くないし、不具合が発生したこともない。ワンルーム用の家電が取って代わる必要はない。また、冷蔵庫や洗濯機は台車無しに運搬できないし、このクルマには乗らない。膨らんだ風船の空気が抜けるように、それもそうだとHさんは納得した。

オフィスビルに紛れてある細長いマンションの2階。部屋は飾り気もなく、実用的な感じだった。中華的な要素もほとんど見当たらない。中年女性が仮初めに住んでいただけだからこんなものかも知れない。それでもHさんは棚という棚、抽斗という抽斗を綿密に調べ廻って、食器やら化粧品やらさまざまな小物を集めた。そのあいだ私は北向きのカーテンを開けて、道路を行き交う人を眺めていた。今年もあと2週間だった。

結局、相当な量の小物以外に白いチェストとハンガーラックを持って帰ってきた。チェストは私たちの部屋に置いてみるとなかなか良い雰囲気だった。収納力もあって、これは正解だ。神田の部屋のあとの処理はHさんと米国に行ってしまった朋友の共通の朋友がやってくれるらしい。こういう場合の中国人の互助精神は素晴らしい。米国までの輸送費、家電の処分代などは米国の朋友が当然出すのだろう。 部屋の明渡しの手続きはどうするのかな。