川の照り

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

帰らざる日々

f:id:guangtailang:20170831222215j:imagef:id:guangtailang:20170831231631j:image池袋新文芸坐で『帰らざる日々』(1978)。今月中旬、飯田に行ったあとなので是非スクリーンで観ておきたかった。

藤田監督にしてはオーソドックスな青春映画だと思う。新宿から飯田へ向かう列車内で主人公辰雄の回想が始まり、飯田に着く頃に回想が現在に追いつくという構成はおそらく原作にもあるのだろうが、見事にハマっている。その枠組がしっかりしているので、他の藤田映画にみられるようなとりとめのなさはこの作品にはない。

出会った頃はなんていけすかねえと思っていたやつが、実は自分のいちばんの理解者、味方だったという辰雄と隆三の関係に今回も泣きそうになる。飯田銀座での祭りの夜、路地で吐いた辰雄がその唇で幼馴染の由美とお別れのキスをするシーンは素敵だ。ラスト、ふたりが出会うきっかけとなった山上りマラソンを、無関係な螢子を付き合わせてやるのも感動的だ。2017年、飯田の街はかなり変貌しているが、それでも周りを囲む山々や坂道、長姫(おさひめ)神社、天竜川などは変わっていない。まあ、当然だが。

二本立てのもう一本、『八月の濡れた砂』(1971)はわりと最近DVDで観たこともあってパスした。今回の没後二十年藤田敏八特集に通って、彼の監督作で観ていないのは『裸足のブルージン』(1975)、『波光きらめく果て』(1986)の2作となった。