川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

四阿

薄曇り。パラグライダーが飛び立つところを見たかったが、風の関係とか色々あるのだろう、準備に時間がかかっているようで、ふと後ろを振り向くと四阿で休んでいる女が持参した桃にかじりつき、足元にぼとぼと汁が垂れているので、そちらに歩いていった。おいおい、ウェットティッシュとか持ってきてるの? 甘い汁に誘われて虫が寄ってきそうだ。

f:id:guangtailang:20200809191926j:image土浦市石岡市の境界にある朝日峠展望公園。トンネルで八郷地区に抜けられようになって以来、峠越えは純粋にドライブを楽しむためのコースとなった。ただ、暴走防止用の凸凹が道路のところどころに設置してある。

f:id:guangtailang:20200809192000j:image喉を鳴らしながら茶を飲む。クルマの温度計は37℃を示している。ところが車外に出ると意外やさわやかな風が吹きわたり、眩暈のするような暑さではなかった。さすがに峠(標高282m)である。それでも僕はキャップをかむり、女は虫除けのパーカーを羽織る。蛇足ながら、この〝峠〟という字、日本で発明された漢字で、表示板のそれを女に示すと読めなかった。

f:id:guangtailang:20200809192103j:image斜面を少し下り、平地になっているところでフリスビーを投げ合おうとするが、陽射しの強さに明らかに女が集中を欠いているのですぐにやめた。そのままハイキングコースを見に行った女にはついていかず、四阿に座ってしばらくぼんやりしていた。どこかの樹木で小鳥がいい声で鳴いている。ベンチに置いたリュックの襞でトンボがじっとしている。キャップと額の接触部がじっとり濡れている。こうゆう場所に来るたんびフリスビーを投げようとするのは自分のエゴかも知れないと思い、俯いていた。四阿に座って桃の汁でも垂らしながら地面に揺曳する緑の影を見るともなく見ているのがほんとうなのだ。

f:id:guangtailang:20200809192119j:image展望台から駐車場までの小道を下っていると、前方をしっぽの青いトカゲがしゅるしゅると横切って叢に消えた。あとで調べたら、ヒガシニホントカゲの幼体だったのかな。気がつくと、ときがわの工房で豆乳ソフトとブルーベリーソフトを買ってふたり並んで舐めていた。これは逸品で、ふだん冷たい食べ物を好まない女も前回食べさせるとハマってしまった。

f:id:guangtailang:20200809192131j:imageそして、日高市に移動して遅い昼食を食べる。ほとんど待たなかった。前回と比べ豚肉の量が少ないと女が言い、たしかにそんな気がするのだった。女も車内で眠ってしまったし、そのままトンボ返りしてもよかったのだが、あまりに時間が早かったので外環道で西に向かい始め、それでときがわ、日高のコンボがひらめいた。ふいに女が目を見開いて、シーチュアンコウ?と言った。僕は前方の標識を見ながら、チュアンコウシーだなと応じた。

午後6時過ぎ帰宅。