川の照り

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

風のバルコニー

f:id:guangtailang:20200807010119j:image6日。炎天下の外回り。キャップをかむり、顔の半分をマスクで覆っている。さらにメガネをかけているわけだからほとんど変装の領域で、お客や知人に出くわし挨拶をしても誰だかわからないようだ。キャップのイメージがわたしに対してないだろう。こちらが自転車に乗っていることが多く、◯◯ですとわざわざ名乗るのも億劫で、そのまますぅーっと横を通り過ぎてしまう。

夕飯のあとドラッグストアに買い物に行き、白天の暑熱がうそのように涼しいので、そのままHさんと川沿いを散歩する。ウレタン敷きのジョギングコースをわたる川風の気持ちよさはちょっと陶然とするほどで、端に寄るとしばし立ち止まってそのまま吹かれていた。

わたしが高校生の頃まで住んでいた川沿いのマンションの8階は、夏でもエアコン要らずで快適だったと今でも母親はよく口にする。ほんとうに一夏をエアコンを点けずに過ごしたことさえあった。南側から隅田川に面する東側にかけてバルコニーがぐるりと回り込み、開け放した窓から今夜のような川風が部屋に流れ込んだ。あのバルコニーは逸品だったなと思う。川向こうの高速道路で夜中もサイレンがウーウーうるさいのがたまにキズだったが。中学生の時分に、それまでコレクションしていたキン消しキン肉マン消しゴム)への愛着が急速に失せて、何を血迷ったか、バルコニーから川に向かって箱いっぱいのキン消しを次から次にぶん投げたことがあった。当時、カミソリ堤防で、遠投というほどの距離もなかった。そういえば、バルコニーでウサギを飼っていた。最初、オスとメスの2匹で、前者が雑種、後者がヒマラヤンという白い全身に耳と鼻周りが黒い種類だった。そのうち、子どもがぽこぽこ産まれて大家族になった。オスはおとなしかったが、メスは気性が荒くてケージに手を差し入れるとよく噛まれた。それこそ今くらいの時期に人間が皆神戸に行くというので、バルコニーにウサギを解放して、野菜の山と十分な水を置いて出かけた。帰ってきたら、ウサギは計画的に食事をするということをしないからどれも腹がぱんばんに膨れて、ケージの下は糞と小便だらけだった。鳴かないから飼いやすいが、糞と小便はそれなりに臭かった。メスが女王のように君臨していたのを憶えている。 

あの頃はマンションの建っている両サイドに建造物はなく、開放感があった。現在は右に大型分譲マンション、左に介護付き有料老人ホームが接近して建ち、細身が巨漢ふたりに挟まれたような恰好だ。川と高速はほとんど変わっていないと思う。

※2017年10月19日の雑記でも同じエピソードを書いていた。ベランダとバルコニーの違いが気になるが、ベランダは屋根がついており、バルコニーは屋根がないのだったか。そうだとしたら、ベランダが正しいか。ただ、マンションの場合、「バルコニーは上階の住戸のバルコニーの床部分が結果的に屋根の役割を果たすケースが多い」というつくりだから、バルコニーでいいと思う。

私は高校生の頃まで台東区隅田川沿いにあるマンションの8階に住んでいた。川側に広いベランダがついていて窓から爽快な川風が入ってくるので、夏でもエアコン要らずだった。中学生の頃だったか、集めに集めたキン消しキン肉マン消しゴム)に対する熱情がある時を境に急速に失われてしまい、それらの大半をベランダから川に投げ込んだ。その頃はまだ川沿いのプロムナードも整備されておらず、ベランダから川までの遠投も、カミソリ堤防を越えてゆうゆう届く距離だったので、誤って地面にキン消しが落下することはなかったと思う。