川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

青空美容院

f:id:guangtailang:20200503193120j:image二三日前。晩飯を食べ終わり、隅田川沿いを浅草方面に向かって散歩する。こっちは久々に来たが、ブルーシートの段ボールハウスがかなり減った印象。それでもHさんは讨饭的人(タオファンダレン)に妙に興味を持つ。以前、餓死しないのかと心配げに言うから、彼らの中には生活保護を受給している者もいると応じた。生活保護についてざっくり説明する。それにほら、近所の公園でも団体が炊き出しとかやっているだろう。あれにみんな並んでいるし。少なくとも、大陸の讨饭的人よりはマシなはずだ。薄闇の中、ジョギングスタイルの人と頻繁にすれ違う。顔にバフをしている人もしていない人もいる。していない人の方が多い。桜橋がライトアップされ、その光が川面に照り映える。

f:id:guangtailang:20200503193136j:image土曜日。焼肉弁当とシーザーサラダ。手元が狂ってサラダをぶちまけてしまう。それを碗に盛り直す。

f:id:guangtailang:20200503193840p:plain『女教師は二度犯される』(1983・西村昭五郎)をFANZA動画で。志水季里子さんの数少ない主演作の1本。良かった。或るレビュアーの方が書いている「この作品の志水季里子は実に平凡な女教師だ。だが、それが逆にエロすぎた。」ということに尽きると思う。でかいレンズの眼鏡をかけている時はずしている時、いかにも堅物な教師然とした物言い、それらの表情がやたらとそそる。女教師と眼鏡、この組み合わせは常道で、アダルトビデオにだって無数にあるけれど、志水さんの演技力が、ロマンポルノは映画であるということを見せつける。雨のテニスコートで泥にまみれながらする気絶ファックも映画でしかない。

f:id:guangtailang:20200503193947p:plain『団地妻 不倫の果て』(1986・白井伸明)をFANZA動画で。これは駄目だ。ロマンポルノは玉石混淆という言い方に倣えば、典型的な石だろう。下町を撮って、武田一成の足元にも及ばない。59分はロマンポルノとしても短いのだが、観続けるのが苦痛で、やたらと長く感じた。音楽の使い方も酷い。ダブル不倫するふたりが家庭から逃げ出し、仮住まいするのが墨田区東向島、それで冒頭に桜橋が出てくる。X型をした隅田川唯一の歩行者専用橋が完成したのが1985年だから、この作は完成後まもなく撮ったはずだ。35年経っても橋は変わらないもんだ。蛇足ながら、私が卒業した中学校がこの橋のすぐそばにある。

f:id:guangtailang:20200504095401p:plain『主婦と性生活』(1984・堀内靖博)をFANZA動画で。律儀と言うのか、題名の地味さに見合うように、ロマンポルノにしてはアナーキーさやノンシャランなところの少しもない作。まじめかっ!とツッコミを入れそうになる。誰の心もいぢらしくはあるが、奇っ怪ではなく、葛藤は微温的な範疇に収まる。ラスト、雨の野外音楽堂の場面など、トレンディドラマかと思った(といって、年代的にこちらの方が早いが)。ただ、中丸新将がレストランのテーブルにゾイドを載せて遊んでいる場面の変態的無邪気さは良かった。あと、泉じゅんの夫役の山路和弘朴璐美と最近結婚された方なんですね。

f:id:guangtailang:20200504143744j:image荒川(放水路)の河川敷に行く。今日もなかなかの人出だ。しかし、スペースはいくらでもあるから、人がいないところにはいない。川上へずっと歩いていくと、少人数でこぢんまりとはしているが、広場でいろんな球技や遊びがなされている。ラグビーボールを息子にスクリューパスするお父さん。空手の道着を纏って向かい合う者。走り回る子供を注意深く見守るお母さん。ウサギのように特定の雑草を毮る者。セパタクローをやる者はいない。川岸で若いカップルが散髪をしていた。男性が白いビニルから頭を出し、女性が切ってやっている。青空美容院。清清しいものを見た。風があるからやりやすくはなさそうだが、女性には技術と道具があるのだろう。