川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

ある日曜

午後3時。荒川河川敷、虹の広場。右に東京メトロ千代田線、常磐線つくばエクスプレスの3線を束ねたように1箇所に集中させた鉄橋が見える。そのちょっと先には東武伊勢崎線の鉄橋もある。都会の川に渡した橋なので、ひっきりなしにどれかの鉄橋の上を電車が通り、その音が響いてくる。東武線の対岸の駅は小菅で、プラットフォームからでも東京拘置所が見える。川沿いのベンチに座ると、ヴォリュームの少ない髪を川風がなぶっていく。陽光が強過ぎて、気持ちいいというよりはやはりじりじり灼かれている感じだ。f:id:guangtailang:20180723012539j:plainf:id:guangtailang:20180723012619j:plain午後2時。1箇月ほど前に友人夫妻と来た千住の昭和レトロ喫茶。入ってみると、席は7割方埋まっている。1人客が多いが、入口附近の初老と髭剃り跡の濃い40年配の男ふたりが大きな声で競馬の話をしている。それを聞くともなく聞いて、ピラフとアイスコーヒーの出てくるのを待つ。と、カランコロンとドアーが開いて、小柄な女性が入ってくる。ずんずん奥へ進んでいき、女店主と親しげに話している。知り合いということでそれはいいのだが、彼女の声が異様にキンキンと甲高く、競馬の会話も掻き消されるほどだ。特に笑い声は凄い。生来のものだからしょうがないのだが、正直気になる。先ほど、神保町の内山書店でちゃんと読めもしないのに買った張愛玲『傾城之恋』(北京十月文芸出版社)をパラパラと繰って字面を追う。長年に亙り中文小説の原書講読会をやっている人のブログをみると、とりあえず大まかな意味でも取れれば、ずんずん読み進めるべきである、とあるので、それをよすがとしたい。日本語訳をすでに読了しているので、それは強みだ。目次を見ると、「第一炉香」「第二炉香」「茉莉香片」「心経」「封鎖」「傾城之恋」「瑠璃瓦」「金鎖紀」「連環套」と中篇が9つも入っており、この厚みでか、と漢字だけ(横書き)の密度を思う。この中で日本語になっているのは今のところ、「第一炉香」「傾城之恋」「封鎖」の3つかな。もっと訳されて欲しいものだ。そういえば、千住ミルディス(北千住マルイ)の上階に入っていた紀伊國屋書店が閉店していたな。リアル書店は消えゆく運命か。f:id:guangtailang:20180723013330j:imagef:id:guangtailang:20180723013535j:image