川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

挽歌

f:id:guangtailang:20170824091405j:plainf:id:guangtailang:20170824092137j:plainf:id:guangtailang:20170824135902j:plainf:id:guangtailang:20170824092017j:plainf:id:guangtailang:20170824121741j:image2013年9月22日、釧路。この時はまだ読んでいなかったが、のちに読んだ釧路を舞台とする小説、原田康子『挽歌』には驚かされた。1956年初版発行だからもう60年も前の、言ってみれば「昔の小説」なのだが、古さを感じさせない。勿論、携帯やらLEDやらカーナビやら現代文明の利器は出てこないし、カタカナ使いの仏語には昭和年代を感じるのだが、とはいえ洗練された文体は2017年に十分通用すると思う。これを著者は20代後半で書いた。

主人公兵藤怜子の強い自意識、それによる小悪魔的な言動と裏腹な怯懦は、読者の共感を得にくいかもしれないが、他方で当時の釧路の街、道東の情景がめざましく浮かんできて、ロマネスク小説の手本のようである。

原田康子は売れっ子の小説家になってからも北海道に住み続け、2009年10月に札幌で逝去した。