川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

中国結び飾り

気がついたら2月か。福建喫茶にこれだけ通っていると、だんだんママの事情にも通じてくる。微信で繋がってモーメンツもみられるからなおさらだ。それはそれとして、彼女は午前11時半より前には店にいないことが多い。代わりにというか、50絡みの中国人の男がいて、僕が店にあらわれると即座に電話し、「ママ、もうすぐ来る」と日本語で云う。それで20分ほど待たされることもある。そのあいだ、ホットコーヒーを男に淹れてもらう。ふつうの味道だ。彼がママと電話している時は方言を使っているのか、内容を聞き取れない。いつもの男がまた昼飯食いに来たよ、とかそんなところだろうが。僕がたとえば下の野菜トーストを噛っている頃、男は出かけていく。午前9時から開けているという話だし、モーニングメニューのプレートがかかっているのをみたこともあるが、ママの夫ではないらしいこの男が作っているのだろうか。その時間帯のことを僕は知らない。

f:id:guangtailang:20190201145218j:imageいつも店外を背にして座るのだが、今日は反対側に座ってみた。僕なんかはもう喫茶店から中国料理店にシフトすればいいような気が、中国結び飾りを眺めていると余計にするのだが、他の客なかんずく老人の客たち(彼らが主力と思われる)がそれでは寄りつかなくなるかも知れない。チャーハンや焼き餃子も出す喫茶店に留まっている方が賢明か。老人のいちにんが昼間から瓶ビールを呷り、刺身を食っているのをみたこともある。

f:id:guangtailang:20190201145225j:image金色と紅色(あかいろ)でレイアウトされた、いかにも中国っぽい装幀が目について、新刊らしく店頭に並んでいるのをぱらぱらめくっているとつい止まらなくなり、買った。著者は1970年吉林省生まれ。文学博士で、茶詩などアカデミックな本を上梓している。いわゆる“中国人論”を謳った本は、日本人の書いた新書なども含め相当数にのぼるだろうが、去年読んだそれは中国ビールのように薄味で、何も残らなかった。この本は数十頁読み進めただけでも、古典文化の中に現代にも妥当する中国的思考の遠因を探り、白酒くらいの濃厚さ、深みを感じる。あとあとまでその香りが残ればいいな。もうすぐ春節

f:id:guangtailang:20190201155256j:imageこれも非常に有益な本である。スジの日本人と、量の中国人というシンプルな概念の対比で、具体的場面に即して両国人の行動原理を解き明かしている。著者は配偶者が中国人、コンサルタントとして大陸での活動歴が長い。読みながら、そうそうと頷いたり、なるほどと勉強になることが多かった。景徳鎮と有田焼の話なんか特に。スジと量、これは使えます。もうすぐ春節

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