川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

別人

f:id:guangtailang:20191229103400p:plain日活ロマンポルノ『闇に浮かぶ白い肌』(1972・西村昭五郎)をDVDで。これは10数分に1回濡れ場があれば何を撮ってもいいことを利用したサスペンススリラーである。雰囲気たっぷりで、わりとしっかりつくられており、安っぽさは目立たない。個人的に好きな作品。【以下、ネタバレあり。尚、役名ではなく、俳優の名で呼んでいます】

冒頭、教会らしき場所で結婚式の場面。白川和子と高橋弘信が祝われている場所から離れたところに、サングラスに黒衣の山科ゆりがシェパードを連れて立っている。彼女は盲目なのだ。犬の名前はジェロニモ。山科は高橋の妹。これでもうつかみはオーケーなわけだ。かようにゴシックで怪奇な映画なんですよ、と。

f:id:guangtailang:20191229103425p:plain新婚1週間やそこらで失踪してしまった花嫁。親の莫大な遺産を継いで豪邸に住む夫は酒浸りの日々となる。正面には欧州旅行の際に撮った妻の写真が大きく引き伸ばされ、飾られている。妹は兄を心配しながらピアノを弾く。

f:id:guangtailang:20191229103453p:plainしばらくすると、突然医師に伴われて妻が帰ってくるが、以前の貞淑さを失い、淫蕩な女に変身している。洋館のだだっ広い居間で交接する。その後、妻に不信を抱いた夫が外出する彼女を尾行すると、公衆便所で肉体労働者相手に春を鬻いでいることが判明する。

f:id:guangtailang:20191229103530p:plain実は帰ってきた妻は医師の益富信孝によって整形手術を施され、以前の妻そっくりとなった別人であった。医師と別人は、高橋・山科兄妹の財産を狙うために一芝居打っているのだった。

f:id:guangtailang:20191229103603p:plainジェロニモをベッドへ招き、自らの下半身を舐めさすなどして悪い癖が復活してしまった山科に不可解な電話がかかってくる。それはほんとうの義姉からで、現在、家にいる女は偽物だと警告するのだ。山科は、ではほんとうのお姉さまはどこにいるのと訊ねる。

するとある時、ほんとうの義姉があらわれる。彼女の顔は醜く爛れていた。しかし、盲目の山科にはそれが見えない。さらには、高橋には白川の姿そのものが見えないらしい。幽霊なのだ。幽霊とまぐわう山科という、怪奇にして淫猥な場面もある。

f:id:guangtailang:20191229103641p:plain白川の飾られた写真の顔が爛れている。これは何度か挿入されるのだが、そのたびに糜爛した範囲が広がっている。ジェロニモも毒殺され、医師と別人の謀略が進行していることに対する、ほんとうの妻からの警告に思える。

f:id:guangtailang:20191229103719p:plainついに高橋は真相をつかむ。ほんとうの妻は敷地の庭に埋められ、白骨化していた。

f:id:guangtailang:20191229103746p:plainそのことを別人に糺すと、彼女の顔が爛れ始める。と同時に、高橋も目をやられて盲いてしまう。その頃、医師にクルマで連れ去られた山科はハンドルにしがみつき、制御を失った車体は崖から墜落し、炎上する。医師は死ぬが、山科は生き残る。

f:id:guangtailang:20191229103818p:plainそして、盲目となった兄妹は豪邸の中で仲睦まじく暮らすのであった。