元旦、実家。明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。柴犬の置物。非常に精緻に出来ているが、制作者は意外にも欧米人なのだと母親が云う。かえって日本犬の特徴をよくとらまえるのかも知れない。それと日本はとかくディフォルメしがちだが、欧米はシュライヒやパポの動物フィギュアに代表されるようにリアリズム(写実)を追求する。これを筆頭に柴犬の大小さまざまな置物が実家にはある。本物の柴犬も1匹いる。去年の11月くらいから実家の向かいで始まったマンション建設のための解体工事。両親から振動が酷くて柴犬が怖がっているというのは聞かされていたが、現場が坂になっており、ビルの下に地階があった。それも堅固なつくりみたいで、道理で解体時の振動が凄いわけだ、ヴェランダからみえるからみてきなさい、と云われるままに3階まで上り、1枚撮る。オリンピック開催の勢いで押したところで、すでにマンションの売行きには翳りが出始めているというが、都心のマンション建設はまだ各所で鎬を削っている。この人口減少・少子高齢化社会で、最終的にはカタストロフィが待っているような気もする。ふと後ろを振り返ると、柴犬がヴェランダまで上がってきて、はっ、はっ、桃色の舌を出しながら息を吐いている。実家の本棚を新居に運び、引っ越し前に使っていた本棚を実家へ持っていった。それで実家の本の大々的な整理が要請されたわけだが、今日、2階に収まっている本棚を眺めていると、懐かしい本を発見した。それが下の『名探偵13人登場』で、おそらく父親が買ったのだが、これを私は小学校高学年の時に、わからない漢字を飛ばしながら熱中して読んだ。その頃から、こういう怪奇な話に傾斜する心性が育まれていたのだな。おどろおどろしい表紙。横溝正史や坂口安吾の名前はきっとこの本で覚えたのだろう。奥付をみると昭和50(1975)年初版発行になっているから、私が生まれる少し前に買われた本である。父親は27歳であったろう。この本の他にも、松本清張「高校殺人事件」と城昌幸「怪奇製造人」というのを同時期に読んでいたのを憶えている。本棚を眺めていて、またこういう本も見つけた。父親が大学を卒業する年に発行されたものらしいが、中に大江健三郎「政治少年死す セヴンティーン続編」が掲載されている。この小説は発表当時(1961)、前年の「風流夢譚事件」の影響、右翼の抗議を受けたことで、書籍化されなかった。去年、57年の時を経て、大江の全集に入れられ書籍化が実現した。父親はどうやらこの「三田会114」(1973)で読んだらしい。ほとんど内容を忘れているようだが。70年代的挿絵。