川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

台風の影響 ~舟山普陀山~

16日。朝から曇天で風が非常に強い。朝飯を食いに別棟から本棟へ中庭を歩く時も、ぬるく強い風に髪をなぶられた。いよいよ台風の影響かしらん。今日は船で普陀山に渡るのにから。この島の成り立ちがなかなか面白い。

「当地が観音霊場となった由来は、〔中略〕916年、中国への渡来僧である慧萼(えがく)が、中国留学を終えて日本に帰国しようとした際、日本に招来しようとした観音菩薩が当地で日本に渡ること拒んだ(=不肯去)、という故事にちなんでいる。よって、その観音菩薩は「不肯去観音」と称されており、そのお堂は「不肯去観音院」と呼ばれる。以後、この舟山群島中の普陀山は、観音菩薩の浄土である普陀落に擬せられ、人々の信仰を集める中国有数の霊場となった。「普陀山」という名称の由来も、「補陀落」である。」

或いは、

「恵萼は大中2年(858年)に五台山から得た観音像(『仏祖歴代通載』では菩薩の画像とする)を日本に持って帰ろうとしたが、普陀山で船が進まなくなった。観音像を下ろしたところ船が動くようになったため、普陀山に寺を建ててその観音像を安置したという。この観音は、唐から外に行こうとしなかったことから、不肯去観音(ふこうきょかんのん)と呼ばれた。 」

Wikipedia

尚、「えがく」の漢字表記は一定しないそうだ。

f:id:guangtailang:20180821094035j:image上のマップの左端真ん中あたりから海上を点線が数本走り、そのうちの2本が普陀山に到っているが、それが我々の航路だ。重厚な建築の舟山旅游集散服务中心から乗船する。f:id:guangtailang:20180821094314j:plainチケットを買って、建物内から外を見やるとザーザー降りである。それでも買ってしまったのだから、船着場に赴く。何百人も乗れそうな船。f:id:guangtailang:20180821100653j:plainf:id:guangtailang:20180821094425j:plainf:id:guangtailang:20180821094516j:plainものの10数分で普陀山に到着。すると、船を出た瞬間から横殴りの雨である。完全に台風の影響やん。船着場の建物も老朽化しているのか、天井から漏水があり、白い大バケツをいくつも出してそれを受けている。他の人たちも呆然と外を眺めながら雨宿りしている。チケットは正午までに戻って乗れば有効だが、こんな天候じゃ今日は観音様を参拝できそうにないな、ここで1泊しようかという息子の提案に母が嚙みつく。クルマにスーツケースを置いてきて手ぶらなのに、どうして泊ることができるの!Hさんの妹も頷く。だけど、こんなんで傘を差したってずぶ濡れだろう。あなたがちゃんと安排(アンパイ 段取りする・手配する)しないから… これにはさすがに息子も声を荒げて言い返す。台風の影響なのに、どうやって安排しろというんだよ!母もさすがに無茶を言ったと思ったのか、自分で笑ってしまう。

 すると、台風にこういうことはままある、俄かに雨の勢いが衰え、ほとんど止んでしまった。5人で顔を見合わせ、無言のうちにこれなら行くでしょ、という表情をしている。ディンディンが「走!(ゾウ!)」と一言、歩き出す。f:id:guangtailang:20180821094623j:plain南国の趣きあり。南海観音までは結構遠かったな。線香を箱買いして、Hさんが蓋に氏名を書き、つづいて私が書く。その下に全家人と書く。途中から坂道を上っていく感じになる。参拝するのにまた、1人6元だかの门票を買う。f:id:guangtailang:20180821094728j:plain汽水域だからだろう、海の色はコーヒー牛乳色。f:id:guangtailang:20180821095443j:plainf:id:guangtailang:20180821095347j:plain観音様を撮るのは良くないとHさんとディンディンに言われ、それはやめる。線香に火をつけ、両手で持って、周囲の中国人の参拝の仕方をまねる。座って参拝している人は座布団に膝を乗せて、掌を上に向けてこうべを垂れているので、それもまねる。心理で、えがくさんと同じ日本から来ましたよ、と念じる。見上げた観音様は優しい顔をしていた。

観音様が向いてる方角を向いて、写真を撮る。f:id:guangtailang:20180821095608j:plain下ってきて海辺まで来たが、船着場までまだ1km以上ある。f:id:guangtailang:20180821095706j:plain12時の船着場は人民で溢れかえっていた。ここで30分ほど待たされる。標語だらけの中国の広告を眺めて過ごす。f:id:guangtailang:20180821095839j:image

「ネィガ、シーシェンマメンダーチャオ?」と助手席の私がディンディンに問う。彼もわからないと言う。あとで調べると、西「堠」門大橋だった。「堠(hou4 ホウ)」の字は名詞で、「敵の様子を見渡せる昔のとりで」という意味だそう。まあ、ネイティヴも普段まったく使わない漢字だろう。f:id:guangtailang:20180821133045j:imagef:id:guangtailang:20180821100433j:plain高速公路を走っていると突如、凄まじい雨がフロントグラスに叩きつける。ワイパーをマックスにしてさえ、視界が確保されない。完全に台風の影響だ。ハザードを灯し、速度を落として走行するが、空間は薄灰色に染め上げられ、視界はほぼなくなった。後部座席からHさんがどこかに停まれるところはないの?と言うが、息子は高速で停まるのは危ない、のろのろ運転でこのまま走るよと答える。f:id:guangtailang:20180821100130j:imagef:id:guangtailang:20180821100216j:imageそれから20分ほどで雨はいくらか衰え、普通の雨になり、諸曁に戻る頃にはすっかり上がっていた。地元の店で夕飯を食べる。すべての行程を運転したディンディンはさすがにお疲れだ。f:id:guangtailang:20180821100618j:imageマンションの厨房で調味料の棚を撮る。f:id:guangtailang:20180821100635j:image