川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

ナガオカモナムール

とにかく屋内から外に出るたんび、さっきまでの天気が崩れて、或いは持ち直して、一日のなかで猫の目のように変わる天候に翻弄された。かつて中越地方で育った女性と花火を見に来たことがあるが、向こうの方に灰色の雲が湧いているのをしばらくみつめた彼女は、雨の降り出す時間、そして止む時間をほぼ当てた。花火の頃には大丈夫だから、と。今回、そのことを思い出した。

f:id:guangtailang:20180121170343j:plainアオーレ長岡火焔土器。思っていたほど雪は積もっていなかった。着いたばかりのこの時は陽光が差していた。

f:id:guangtailang:20180121171919j:plainf:id:guangtailang:20180121172013j:plain入口からして昭和レトロな雰囲気ををぷんぷんと漂わす。今まで長岡には10回以上来ているのに、来店は今回初めて。

f:id:guangtailang:20180121172433j:imagef:id:guangtailang:20180121172531j:imagef:id:guangtailang:20180121172556j:imagef:id:guangtailang:20180121172619j:image列車の座席みたいな椅子がまた趣きがあって。全席喫煙OKなはずだが、誰も吸っていなかった。お客さんの注文の仕方から、常連の雰囲気が伝わってくる。下世話な話、当初の内装施工費用は相当なものだったんじゃないかと思った。それくらい意匠にこだわりが感じられる。

f:id:guangtailang:20180121174058j:plain店を出てまもなく、ぱらぱらと霰が降ってきた。さっきまでのお天気はどこへやら、空には分厚い雲が垂れこめている。霰はすぐに冷たい雨に変わって、勢いよく降り始めた。長岡の街の中心部にはアーケードが設けられ雨雪を防げるのだが、私はすでにその外側に歩を進めていた。昔ながらの雁木がとぎれとぎれにあり、あちこちから道路に消雪ホースが伸びている。

f:id:guangtailang:20180121180305j:plain蔵王の大欅」。推定樹齢700年。降り止まない雨に、この頃にはジーンズの太腿までぐっしょりと濡れ、ダウンジャケットのフードを被っていたが、眼鏡のレンズもびしゃびしゃで視界が遮られた。向かっている場所があったのだが、今日のところはちょっと無理じゃないかと思い始めた。

f:id:guangtailang:20180121181344j:plainf:id:guangtailang:20180121181501j:plainf:id:guangtailang:20180121181546j:plainひとまず引き返し、駅前の昭和レトロホテルにチェックイン。ここに泊まるのは2回目か3回目。窓からの眺望は無く、工事現場の火花が散っているのが臨めた。衣服を脱ぎ捨て、暖房を28度設定で点けた。酷かったのが鞄で、オイル防水なので内部まで雨水は滲みていないのだが、革の持ち手がぬるぬるで気持ち悪い。暖房のいちばん当たる部屋の真ん中に置いた。

f:id:guangtailang:20180121182551j:plainf:id:guangtailang:20180121182633j:plain小一時間部屋に滞在し、窓の外を見るとだいぶ小雨になっている。生乾きのジーンズを穿き、駅から近い河井継之助記念館へ赴く。ここは何度も来ているからざっと流して廻り、小千谷談判の嘆願書の文章だけ熟読する。暖房が効いているので、衣服もほとんど乾いた。閉館時間が近かったのもあるが、館内は私ひとりだった。妙に静まり返っており、時折外をクルマが通り過ぎる際に跳ね上げる水の音だけがシャーと遠くの方で聞こえた。館を出ると、雨は止んでいた。

f:id:guangtailang:20180121184255j:plain水道公園。さっきは途中で断念したが、空が明るくなってきたから、やはり今日中に来た。時刻は5時数分前。信濃川からの風で頬がびんびんに冷えている。

f:id:guangtailang:20180121185121j:plainf:id:guangtailang:20180121185213j:plain5時を廻ると、給水塔に明かりが灯った。

f:id:guangtailang:20180121185503j:plainf:id:guangtailang:20180121185959j:plainf:id:guangtailang:20180121190328j:imagef:id:guangtailang:20180121190348j:image駅ビルの店で野菜天へぎを喰らう。気色悪いおっさんで恐縮なのだが、店員の女の子がちょっと気になった。取り立てて美麗というわけではないが、存在に透明感があった。黒髪、新潟の水でみがかれた肌がかがやいていた。相すみません。

朝日山とコピリンコの小瓶を買って、ホテルに戻る。ダウンジャケットのフードの毛がまだ少し湿っていて、獣じみた臭いを発している。1日目終わり。2日目につづく。