川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

バーティカルの病

f:id:guangtailang:20210729131200j:image尾籠な話ばかりつづけているが、人間の躰のことですから。躰のない人間は幽霊だもの。強力ポステリザン軟膏を肛門に塗布していると何かが指に触れた。見ると、からげた吸収糸の一部だ。ああ、溶け残ったものかなと思った。記念に洗って机の抽斗にしまった。いつか、伊豆下田の美しい海で波と戯れたあの午後の時間。楽園を楽しむのも躰に何の故障もないことが前提となる。ことの軽重にもよるが、なにかしら故障があるとそれにばかり意識がいき、どうにも不安が拭えない。ひととき不安を忘れたとして、気がつけばまたそれに意識がいっている。性格にもよるのだろうが、この結局それに戻るという心理の機構が疎ましい。

院長先生が退院後の指南の際、話頭にのぼったエピソード。退院したその日にゴルフをした男性がかつていたという。グリーン上で大出血して救急車で運ばれた。糸がちぎれたかほどけたかしたか。剛の者というより愚か者。創部を悪化させ、周囲を驚かし、場を白けさせ、また手術のやり直しになる煩わしさ。

f:id:guangtailang:20210729131208j:image犬は二足歩行の人間の垂直性の圧を持たないので、水平性の利点で痔になることはないという。しっぽをめくって肛門を見た。美しく、羨ましかった。