川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

停留場脇にて

f:id:guangtailang:20190122114444j:image平日は台東、荒川、墨田、足立の4区どこかを奔走する人生。遠方に出張などめったにない。今日も今日とて荒川区。去年まで居住していた区であり、かかりつけの肛門病院がある。荒川区の特徴のひとつは、やはり都電荒川線が都内唯一の路面電車(軌道路線)として生き残り、走っていることだろう(2017年、東京さくらトラムという、凡庸で取り柄のない愛称が付けられた)。Wikipediaによると、ピーク時には40路線が展開されていたという。私の職場附近に住まう古老などは今でも、「あそこの都電通りを…」などとふつうに云うのだが、私の父親世代を10も下るともう、そうゆう云い方は聞いたことがない。

都電荒川線、始発/終点の三ノ輪橋停留場の脇にある喫茶店で昼飯。客層を見廻すと、どうやら地元のお婆さんの憩いの場になっているようだ。長閑な雰囲気が漂っている。スーツ姿は私だけ。都電が発着するフォームの地面より数段低い場所に店が立地していおり、乗降客の脚と寛ぐ客の目線の高さが、窓ガラスを隔ててちょうど同じくらい。こうゆう高低差はちょっとおもしろい。

f:id:guangtailang:20190122131309j:image『加藤嶺夫写真全集 昭和の東京2 台東区』(deco)、「東京都最新区分地図帖」(昭和38年版)より。当時、上野が中心なのがわかる。

ところで、新居に越してひと月も経たないうちに、斜向かいの家の壁に「解体工事のお知らせ」が貼られ、今月の半ばから狭い道路にトラックを突っ込み、作業が始まっているのだが、どうも親方以外は中国語でやりとりしているようだ。そこにHさんが出勤のため門扉を開け、解体の男が「おはようございます」と胴間声で日本語の挨拶すると、Hさんも「おはようございます」と日本語で応じる。こうゆうのもちょっとおもしろいから、私は家の中で耳をそばだてている(無論、互いに日本語で挨拶するおもしろさなのだが、そもそも大陸において中国人はこのようなケースの場合、你好や早上好などと挨拶を交わさないだろうから、それが日本の東京の片隅で行われていることのおもしろさである)。