川の照り

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

カーフェリー

日活ロマンポルノ 、『ザ・コールガール 情痴の檻』(1977・監督 林功)。ロマンポルノはたいてい60分〜70分台の長さだからサクッと観られる。これは凡作だった。【以下、ネタバレあり。役名では呼ばず、俳優の名で呼んでいます】

現在は東京湾アクアラインがあるが(1997年開通)、この当時は木更津と川崎を結ぶカーフェリーが活躍していた。『八月はエロスの匂い』(1972・監督 藤田敏八)でも東京湾を横断するカーフェリーに乗船していたし、房総の南へはそうやって行く時代。

f:id:guangtailang:20190403213432p:plainf:id:guangtailang:20190403213500p:plain話の筋は単純だ。今は木更津で理髪店を営む喘息持ちの男に嫁いでいる女、松永てるほは過去に川崎でコールガールをしていた。ある日、理髪店にその頃客であった男、五條博が訪ねてくる。フェリー乗り場で彼に待ち伏せされ、フェリーに乗せられたりするうち、病弱な夫に不満を感じていたてるほは五條に溺れてゆく。しかしまもなく、その事実を夫が知ることになる。

f:id:guangtailang:20190403213527p:plain後方に映る中の島大橋(1975年完成)が印象的。これは現在でも木更津のランドマーク。日本一高い歩道橋だとか。

f:id:guangtailang:20190403213559p:plain忌憚なく云っててるほの演技がへたくそ。私は演技の巧拙をあんまり気にしない方だが、今回は気になった。

f:id:guangtailang:20190403213635p:plain海が映って、男女が映る。茫洋とした自然の前でちっぽけな人間の情緒が哀しく漂う。

f:id:guangtailang:20190403213705p:plainカーフェリーの中で売春を持ちかける千葉の不良少女ににん組。この映画の半分くらいはカーフェリーの上だ。喘息持ちの夫がてるほと五條の密会の現場であるフェリーにあらわれ、てるほを激しくなじる。それで取っ組み合いになった五條はいきおいで夫を殺す。死体を運ぶ際、不良少女のひとり、梓ようこに目撃され、てるほは彼女から脅される。五條は売春を装って梓をホテルへ連れ込み、毒を食らわば皿までと彼女を絞殺しようとするが、そこに刑事が踏み込み、売春の現行犯で梓は逮捕される。腹いせに五條を「人殺し」と呼ぶ梓。

f:id:guangtailang:20190403213754p:plain梓。この人の雰囲気はなかなか良い。Wikipediaによれば、70年代にSM誌のグラビアモデルをやっていたという。ラスト、夜、中の島大橋を見渡せる埠頭に佇むてるほに後方から刑事らが近づいていく。これは良い。

f:id:guangtailang:20190403213831p:plain夫が喘息持ちであることの描写や、脅しの犯人を当初、理髪店の奉公人と思い込み、彼に300万円を渡した直後に梓から電話がかかってくる場面、夫を階段から落下した事故死に見せかける描写、刑事がフェリー上で張り込みしている場面などなど、いかにもわざとらしく稚拙に感じた。もっと文法の常道から逸れたっていいのに、手堅くまとめようとして、却って瑕瑾として目立つ。