川、照り映えて

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

塩の瓶の蓋

お盆休み前からなんやかやバタバタしていた。

事務所の近所にある中国料理店の老板娘(ラオバンニャン 江蘇省出身)が突如来店、知り合いの部屋探しを頼まれる。昔は昼飯によく行っていたが、味がやたらと落ちた時期があり、それを境に行かなくなった。調理しているのは彼女の夫である。久しぶりに老板娘の顔を見たが、少しの隔絶もなかったようにひっつめ髪の笑顔で語りかけてくる。

f:id:guangtailang:20250809120956j:imageなんやかやバタバタしていた僕は、エリアが違うことを理由にその部屋探しを中国語に堪能なT不動産のPさんに振ってしまう。京都人の彼女の夫は北京人で、彼女自身の中国滞在も2年半に及ぶ。

ある日Pさんとともに老板娘の店を訪れた。時刻はもう2時を廻っており、店内に客はおらず、奥の席で中国人4、5人のなにやら話し合いが行われている様子だ。すぐに老板娘が立ち上がってこちらに来ると、冷水を注ぎ、注文を取る。Pさんは上海焼きそば、僕は麻婆春雨。あと、干し豆腐をたのんだ。

出てきた干し豆腐がどんだけ塩をまぶしたんだというほどにしょっぱい。塩の瓶の蓋がはずれたんじゃないか。夏だからといって、この塩分量は食えるレベルじゃない。さすがに老板娘にクレームを入れる。その皿を持って厨房に消えると、すぐに「味直しました」と言って出てきた。それでもまだしょっぱく、Pさんはついに箸をつけなかった。

f:id:guangtailang:20250809120959j:image後日、同じ席に座って木須肉(ムースーロー)をたのむと、これはなかなかうまかった。表にゴミを捨てに行く老板(ラオバン)もなにやら軽やかな足取りで、彼の気分に味が左右されているのか。

f:id:guangtailang:20250813093636j:image隅田川沿いの土手(スーパー堤防ともいうらしい)を散歩する。

f:id:guangtailang:20250813194827j:image読了。この著者は中国語学習界隈ではわりと有名な方らしい。とはいえ、日中国交正常化前に中国語学習をはじめ、僕の生まれた年に中国に初めて渡っているので、年配の中国語学習者のあいだで、ということだ。徒手空拳は言い過ぎにしても、当時の環境下、できうる限り己で工夫し、時間をみつけ、積極的に中国語教室に突っ込んでいき、学習に明け暮れるさまが描かれており、敬服するほかない。今みたいに道を歩けば中国語が聞こえてくるということはないのだ。己で確固として道を定めて、日本の自宅にいながらにして「台所から北京が見える」という境地に至ったのだ。

べテランの通訳者になって以降、浙江省との縁も深いようで親近感を覚えた。市井の主婦が中国語をライフワークとした。この道のパイオニアとして、この先も色褪せない方だと思う。

f:id:guangtailang:20250813093631j:image鵞足滑液包炎をやってこのかたジョギングはやめたが、隅田川沿いの土手はよく歩いている。

f:id:guangtailang:20250815114743j:image小諸市のカフェより。なだらかな斜面の下に佐久平が望め、その向こうは八ヶ岳だ。お盆休みの軽井沢中心部はものすごい混雑ぶりだが、ここはゆったりしている。

f:id:guangtailang:20250815114730j:image両親は愛犬を連れてクルマでここに至り、僕らは両親の帰京日に新幹線でここに至り、一緒に帰る、こういうことだった。

f:id:guangtailang:20250815114734j:imageゆるやかに下る坂道に立つ。母親の好きなスーパーツルヤはここ小諸市(当時は北佐久郡小諸町)が発祥だ。現在でも長野と群馬一部に出店しているだけである。

f:id:guangtailang:20250815114738j:image小諸市における台湾人と大陸人の邂逅、柴犬を通じて。

f:id:guangtailang:20250815114726j:imageミカドコーヒーのモカソフトはプルーンがついているという理由でカップにする。

f:id:guangtailang:20250817135124j:image中国人顧客に教えてもらった近所の中国料理店は何を食ってもうまかった。塩の瓶の蓋がはずれたということもなく、夏場にちょうどよい塩加減。この店、以前は北京人がやっていたはずだが、現在は人が変わって揚州人だという。店の名前、夫婦ふたりで切り盛りしているのは一緒だ。

f:id:guangtailang:20250817135022j:imageHさんのリクエストで梨狩りへ。かすみがうらのいつもの園だ。梨の樹の下に猫が寝そべっている。捥ぐのはもっぱら彼女に任せ、椅子に座ってぼんやり遠くを眺めていると、一箇所ぼとぼとと水が滴っている。まさか梨の水分じゃないだろうこんな勢いは、と思って近寄ってみると果たして梨から落ちている水なのだ。塩の瓶の蓋ははずれていないが、梨の実から水が滴っている。

f:id:guangtailang:20250820181126j:image足立区千住東、最寄駅牛田。といっても地元の人以外はよくわからない。そんな場所にこのカフェはある。ここのスパイシーチキンサンドのファンだ。北千住からも歩いて来られる。コーヒーがうまい。カフェラテもうまい。かつてこの店の支店が土浦駅構内にあったが、ラテアートを描けず、味も違った。ある時行ってみるとありふれたチェーンのコーヒーショップに変わっていて少し悲しくなった。