川、照り映えて

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

メヒカリ、アンコウ、ウナギ

旧聞に属する内容の話。数ヵ月前、Hさんに誕生日はどう過ごしたいのかと訊かれ、僕たちの習いで北関東を旅行しようと答えた。それで僕が決めた場所が五浦だった。そこから7年くらい前に泊まったホテルを予約し、プランを組んだ。しかし、その日が近づくにつれやきもきし始めたのが、天気が両日とも本降り予想なのだ。

f:id:guangtailang:20250323122438j:image果たして1日目の朝。雨だった。が、それほど強い降りじゃなく、フロントグラスを薙ぐワイパーの動きも緩慢な部類だ。Hさんがボトルに注いでくれた温かい茶を飲みながら一路北上、日立おさかなセンターで昼飯。あたりまえのことを書くが、北関東といっても東京に寄った南部と北部では距離がだいぶ違い、日立あたりまで来ると旅感が出てくる。

f:id:guangtailang:20250323122425j:image北上するほど雨は小降りになり、ついには止んだ。この店に来たら必ずメヒカリの唐揚げをたのみ、頭からむしゃむしゃと食う。今夜泊まる宿でもアンコウ鍋の他、追加でメヒカリの唐揚げを予約している。ちなみにメヒカリは通称で、アオメエソまたはマルアオメエソというみたいだ。冴え冴えしない名だから、メヒカリ(目光)が人口に膾炙するわけだ。

f:id:guangtailang:20250323122417j:image五浦といえば岡倉天心。英語が抜群にできて国際的に活躍した天心も、北茨城に来てからは仙人みたいな生活をしている。『茶の本』を大学時に読む講義があったのだが、華麗な英語で書かれている上に、ずいぶん皮肉屋な文章だと英語のできる学生が言っていた。この講義の先生が東大出の村山という人だったのだが、疲れているのか、ある時こっくりこっくり居眠りを始めたことがあって、あとで九州から来ていた年上の学生のSさんが、「高い学費払って美大に来ているのに、あれはないと思わないか」と少し憤慨していた。以上は昔の挿話だが、美大といえば、今、藝大、ムサビ、タマビ、京都芸大などに中国人学生が大挙して押し寄せているとニュースでやっていた。留学生のうち、7割が中国人という大学もあるらしい。理由はいくつかあり、ひとつは中国には美術専門大学が非常に少なく、あまりに狭き門なので、苛烈な競争を避け、欧米に比べて地理的に近く、学費の安い美大のある日本を目指す。ひとつには、日本のサブカルチャーないしファインアートを身近に育ち、愛着のある世代が日本の美大を卒業、日本で就職し、定住を希望する。そういうようなことみたいだ。

f:id:guangtailang:20250323122429j:imageアンコウづくしのコースでどれもうまかったが、僕のいちおしは鍋の出汁でつくったおじやにブラックペッパーをふりかけたやつだ。コースの終盤だったが、箸が止まらなくなった。Hさんはすでに満腹で、僕だけが鍋から掬っていた。

f:id:guangtailang:20250323122434j:image夜の二ツ島。暗闇の中で波の音だけ聞こえて、最初は気になるのだが、じきに慣れて寝入ってしまう。翌朝、カーテンを開けるとザーザー降りで、飯を食いながら窓の外を眺めて止みそうにないと判断し、予定を大幅に変更して早めに帰宅した。

f:id:guangtailang:20250323122421j:image3月20日夕刻、成田空港ターミナル1で鰻重を頬張り、Hさんは中国国際航空(CA)で里帰り。向こうに着くのは夜中だ。