川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

去年、ひたち海浜公園で

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Hさんは疲労困憊し、今日は仕事を休むという。しばらく前から神経病(シェンジンビン・頭おかしい)の同僚と付き合わざるを得ず、そのストレスがすごいようだ。傍から見ていてそれがわかったので、そいつをなるべく相手にしないようにできないのかと言ったが、渋い顔をしただけだ。くっきりした二重まぶたに疲れが溜まって、落ちてきている。彼女は社交的で人がいいから、神経病ことBをなんとかしてほしいと他の同僚から宛てがわれた。それは、ざっとこんな経緯。

会社の中で一応序列がある。僕の知っている範囲で、Hさんの上にMという身長172cm痩せ型の福建女性がいる。その上にWという現在は福建福清だかに帰郷中の、日本の大学を出た僕と同い年の福建女性がいる。ふたりには何度も会っているが、日本語が達者で、人柄はすこぶるよい。モモさんと初めて会った時、日本の福建人には悪い人が多いとやたら強調するから、先のふたりを念頭に、「そんなことないですよ。福建人だっていろいろいるでしょう」と反論した。モモさんは長年スナックをやっており、その付き合いの中で得た観点かもしれないが、こちらには別様の観点がある。Hさんと婚姻して以来、知り合った多くの中国人が福建人だが、はっきり言ってモモさんほど己を主張し、思い込みが激しく、人を見下す人はいない。もう引っ越してしまったが、家の近所にいた60年配の上海人のおばさんがやはりそうだった。仕事上で付き合いのある上海人の若者(20代後半から40手前くらい)は皆スマートで、上述の要素は全然ないのに、上海人のおばさんよ、と思うが、まあ結局は人だなと思いたい。ちなみにHさんは浙江人である。

で、Hさんの下にGPとGXという吉林人の姉妹がいる。彼女らのことは最近Hさんからよく聞かされているし、一度会ったこともある。去年、ネモフィラの時期にひたち海浜公園で。向こうは子ども連れで、日本人の夫たちは来ず、妹が大型ミニバンに皆を乗せてきた。ナチュラルボーンバイリンガルの子どもたちが唯一の男性である僕に纏わりついた。だから僕も奮発して遊園地チケットを買い、彼彼女らと一緒にアトラクションに乗った。そんなことは今はどうでもいい。

姉の方は喋り方に北方人らしい直截さがあり、妹の方は声が可愛らしいからか、口調も柔らかく聞こえた。妹の方が日本語が流暢なので、そう感じたのかもしれない。中国語を話すとその標準的発音に惚れ惚れした(家では聞けない翘舌の魅惑もある)。感じのいい姉妹だと思った。

ざっとと書いたわりに前置きが長くなったが、件のBというのが吉林女性で、姉妹と同郷だったため、妹がどこかで知り合って事務所に連れてきた。その後、さあ一緒にやりましょうとなったのだが、しばらくするとGXとBが口論となり、激高したBがGXの連絡先をすべて消去した。GXは姉にも相談したのだろうが、上司のHさんに話が回ってきた。そこからHさんと神経病のやりとりが開始され、コーヒーショップで話をしたり、ランチを奢り奢られたりしながら、GXとの関係修復の橋渡しをし、仕事のやりかたについてもレクチャーした。それは時々でうまくいっているように思えた。Hさんも満足げな表情で僕に語っていた。が、それも長続きはせず、Bのめちゃくちゃな言動に、今度はGPが「闭嘴(ビーズイ・だまれ)!」と叩きつけたらしい。「北方人は言葉がストレート過ぎる」とHさんは嘆いた。しかし、そうまで言われる理由がBにはあるのだろう。内容の詳細まで僕は知る立場にないし、別に知りたいとも思わない。ただ、WとM、G姉妹、その他の同僚と長年うまくやってきたHさんが、Bに関しては匙を投げかけているということを僕は重くみているし、WとM、G姉妹に僕は好感を持っているから、神経病が掻き回している現状を苦々しく思っている。これは個人的な印象だが、電話口から聞こえてくるBの喋り方、笑い声も下卑ていて好きではない。

おまけ。事務所をたまたま訪れていたモモさんとBが一緒になったことがあるという。モモさんは例によってまくし立てたのだろう。彼女が帰ったあと、Bがなんて高慢なんだと言ったという。この光景にはにやにやさせるものがある。あなたが浙江人でよかった。