川の照り

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

火の国のA

f:id:guangtailang:20220321173600j:imageそそり立つ壁の駅ビルをぺデストリアンデッキ側から撮る。午前11時48分。SあらためAが見慣れたベージュのトレンチコートを纏って近づいてくる。小走りで、軽く会釈しながら。その動作を174プラスややヒールの彼女がやることで背ぇ高の風がふわりと起こり、ふつうの可愛らしさとはまた違った魅惑的なものが僕の目には映っている。

花冷えと言うが、ともかく己の誕生日の頃はまだ寒いと毎年思うのだ。今日だって昼間なのにさほど暖かくもない。明日なんて最高気温が5度で雨だ雪だと騒いでいる(3月21日20時時点)。

話は変わるが、最近おもしろかったものに官能小説家の宇能鴻一郎氏(1934~)とフリーアナウンサー近藤サトとの対談がある。婦人雑誌の記事を転載したやつをネットで読み、対談自体は他愛ないものだが、氏の長年のファンである近藤が邸宅に招かれ、そこで行っているので内部の写真が見られる。Wikipediaに〈…横浜市金沢八景の敷地600坪の洋館で老秘書を従え、社交ダンスのパーティを開くなどの貴族的な暮らしぶりが伝えられる〉と、客として出入りした者以外には秘められたように書かれているので、「江戸川乱歩の美女シリーズ」ファンとしてはどんな日本離れしたキッチュだろうと前々から興味があった。ちなみに宇能氏の小説は一冊も読んだことがない。『鯨神』も読んでいない。氏原作のロマンポルノは何本か観ているかもしれない。

f:id:guangtailang:20220321173646p:imageAと路地裏にある民家を改装したカフェでランチ。11時53分に到着したが、正午開店の店はすでに5、6組ほどの行列をつくっている。Aが路地の向こうのもうひとつの行列を差して、そっちでは食べたことがあるという。調べてみると今日の店の姉妹店だ。このあいだ行った旧日光街道沿いの店もそう。どこも繁盛している。実のところ、この街で一人暮らししていた頃からこの店の存在は知っていたが、男ひとりで入れる店じゃないと敬遠していた。そこから十数年の時が過ぎて、ついにだ。Aのように細長い女性はモディリアーニの絵画のモデルとしても向いている。僕らは40分で出て、開店と同時に入った組ではいちばん早かったと思うが、外では予約しなかった僕らより先に来ていた組が依然ベンチに座っていた。

f:id:guangtailang:20220321174144j:image内装から何から癖の強いカフェ。いろんなところから光源が射し、これぞキッチュと言うべきなのだろう。謎に銭湯のペンキ絵の壁の前で甘いものを食べた後、今日も15時に予定があるという彼女と日比谷線に乗り込み、これまでのデータから「そんなにたくさん食べる方じゃないよね。かといって小食でもないけど。ちょうどいい感じ」と、どうでもいいようなことを言う。「そうですね。でも、生理の前とかバクバク食べちゃうんですよ。量を食べるというより、ずっと何か口にしている感じですね」。あと、九州はふるさと納税の返礼品が豪華だとか、サブリースはとにかく絶対にやめた方がいいよねとか、手賀沼ロードバイクで一周しましたとか、火の国の女でありがとうございますとか、そんな話。先に降車したあと、また直ぐに会いたい気持ちが湧いてきた。

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