川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

大地震と映画に関するメモ

10月7日午後7時20分。隅田川

f:id:guangtailang:20211008085844j:image昨晩10時41分に大きめの地震があった。その時、僕は1階で風呂上がりの耳掃除をしていて、スマホの警報音がけたたましく鳴り、すぐ来た。お、これはかなり大きいやと3階のHさんに伝えに行こうとしたら、声を上げながら向こうから駆け下りて来たので、「また恥骨骨折するぞ」と言ったが、その言葉を聞く余裕もなかったろう。さらに「外に出るなよ」と重ねた。日本人ほど地震に驚かない国民も少ないだろうが、Hさんの慌てふためき様はちょっとオーバーだと思ってしまう。彼女が来日したのが2011年、東日本大震災の直前で、よっぽど帰国しようと思ったが、啖呵を切って出てきた手前、ついに帰らなかった。その相手の親族だってすぐに帰って来いと切望していたらしいが。当時、北千住のワンルームマンションの7階に住んでいた僕の部屋の隣りに中国人の男女がいたが、余震がつづくうち、バッコンバッコン派手な音がするなあと思ったら、ある朝、引っ越していった。1階のゴミ集積所に乱雑に解体された家具類が放置されていた。

勿論、中国に大地震がないわけじゃないだろう。2008年には四川大地震があった。多くの建物が倒壊し、たしか小学校なども崩れ、多数の少年少女が犠牲になった。その前の有名な大地震というと、1976年の唐山大地震になるのか。文化大革命中の出来事で、その被害は秘匿されたが、街は壊滅的な打撃を蒙り、数十万人が犠牲になったことが現在ではわかっている。フォン・シャオガンが撮った『唐山大地震』(2010)をHさんと一緒に観た。これがまたいわくつきで、日本での公開が2011年3月だったが、直前に東日本大震災が発生し、それは延期された。で、4年後の2015年になって公開され、それをふたりで観に行ったのだ。観客もまばらな劇場内の暗闇でHさんは鼻をすすりながら泣いていたな。大地震に対して、個人的な体験も含め、さまざまな感情が湧出したのだと思う。彼女の連続する舌打ちも初めて聞いた。中国人にとって舌打ちとは、賞讃、羨望、驚愕、困惑などの意味があるというが、この時は後者のふたつだったろう。その後のディナーも妙にしんみりしていた記憶がある。

映画と地震に関してもうひとつ。クリント・イーストウッドが撮った『ヒア アフター』(2010)も日本で2011年2月から公開され、僕はたしかその月に観に行ったが、翌月に東日本大震災があった。劇中、大津波のシーンがあり、3月14日をもって上映は中止された。