川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

100個の冷凍餃子を持って電車で移動する女性

去年から華さんのパスポートの有効期限が切れており、更新の手続きをすべきなんだが、現在、まずは中国大使館のサイトを通じてオンライン予約をしなきゃならない。この入力がけっこう面倒くさい上に、何度やってもうまくいかない。彼女は私に丸投げで、月曜日か水曜日の午前中にやれとか口では言う。それでもいちにちに受け付けている人数の上限が少な過ぎてまったく予約がとれない。もう10回近くやった。

EMSで向こうの赤ん坊にいろいろと送ってやりたいのだが、最近、送り状の手書きが不可になり、〈国際郵便マイページサービス〉とかいうサイトで必要事項を入力し、それを印刷して箱にはっつけるようなやり方になった。これがまた面倒くさい。郵便局員も詳細をちゃんと把握していない。

物事がスムースに運ばないことは明らかにストレスを醸成する。それに花粉で目と鼻がやられてただでさえ心情不好というわけだった。

さて気分転換に食べ物の画像でも載せようかしらん。

f:id:guangtailang:20210302194804j:imageたまの昼に食べるローストビーフ丼。肉の卸しが弁当屋をやっていてそこで買うので、この赤赤した丼には嘘がない。

f:id:guangtailang:20210302194820j:imageコンクリートの床に置かれたカーフェイジェリーにも見えるが、ちゃんとテーブルの上なんである。窓から錦糸町駅のプラットホームが見渡せる。

f:id:guangtailang:20210302194839j:image六郷の女性が皮からつくる水餃子をいただく。華さんが蒲田まで行く用事があり、今回は郵送でなく手渡しでもらってきた。100個の冷凍餃子を持って電車で移動する女性。黑醋で食べると無類にうまいと思ってしまう。

f:id:guangtailang:20210302231723j:imageイリエワニのタンブラーでウィスキーを飲む。外では風が唸っている。山口百恵版の『霧の旗』(1977・西河克己監督)をDVDで。同時代にさまざまなアヴァンギャルドな映画表現があったからかもしれないが、古めかしい演出や映像の作品にみえた。山口の妖艶、三浦友和の実直、三国連太郎の貫禄は良かった。山口・三浦のコンビなら当世風でアナーキーな若者を描いた『天使を誘惑』(1979・藤田敏八監督)が好きですよ。

先日、みずほ銀行のシステム障害でカードが食われた話があったが、それで思い出した個人的記憶がある。あれはハルピンに行っていた頃、向こうで金を引き出す機会があった。銀行の名は忘れたが、有名な銀行のひとつだったと思う。豪壮なバロック建築の前でクルマから降りるとき、澄み切った空が目を射した。いつものガイド李さんと、その時ドライバー役だったのが王さんという20代後半の青年で、その日初めて会った人だった。VISAカードが使えるという機械にカードを差し込むと、はて食われたまま出てこない。機械はうんともすんとも言わず停止している。困って近くに立っていた李さんを呼んだ。「おかしいね」と言って彼は窓口の方へ向かい、なにやら話している。しばらくすると、でぶっちょ眼鏡の170くらいある女がこちらに寄ってきて、怒り口調で何かまくし立てた。私には何も聴き取れない。するとそのことでさらに立腹したように、言葉を叩きつけられた。カードを食われたこっちがなんで怒られなきゃいけないんだと思いつつ、私は彼女の剣幕にたじろいだ。私は外国人だからあなたが何を言っているかわからない、という文をじれったい頭でつくっているとき、私と彼女のあいだに割って入るように王さんがあらわれ、激しい口調ででぶっちょに詰め寄った。彼女も負けていない。非人情に眼鏡を光らせながら何か言い返している。王さんとのあいだで舌戦がつづき、私はそれをただ傍観していた。李さんもこちらにやってきた。滑稽にも思える状況だったが、それ以上に私の内部で感動がさざめいていた。王さんが私のために怒り反駁してくれていることに。でぶっちょが誰か呼んで機械を操作させ、カードは戻ってきた。が、金は引き出せなかった。私たちさんにんはクルマに乗り込むと、しばらく雑談した。〈好嘞(ハオレイ)〉を連発する王さんの普通話をいかしてると思った。興奮冷めやらぬ口調で彼が実は自分も日本に留学していたことがあるとけっこううまい日本語で言い、新宿の風俗に行ったときのエピソードを話し始めた。失敗談で、さんにんでげらげら笑った。

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