川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

チャック交換代

f:id:guangtailang:20201221104008j:image19日。ファさんとともに銀座へ。彼女のスーツケース及びワンピースのチャックが破損したとのことで、前者を新たに購入、後者の修理・交換を頼みながら銀ぶら。人は歩行者天国には比較的少なかった。なにしろ中華圏の観光客がいない。静かな街路と言えば言える。最初に日本のアパレルメーカーの旗艦店に行き、ワンピースの修理を頼む。ファさんが中国人の服務員がいるはずだが今日はいないのかと問うと、いないと長身の店員が答える。2階に上り、セットアップのスーツを何種類か試着して買わず。そのあいだ、抄太郎はフィッティングルーム近くの椅子に座って目をつむるか携帯をいじっている。1階に下りると、修理依頼の取り違えやらなんやかやあって、不意に後方から中国語が聞える。ファさんが振り向くと服務員がいた。やりとりをしているうちに、チャックの修理ならば三越の3階にその手のカウンターがあると彼女が言う。じゃあそっちに行くということでファさんが出口に向かう。抄太郎は瞬間、お高いんじゃないのと思った。道すがら、店頭にスーツケースを並べている店があり、ファさんは入っていく。そこでの買い物はビャッとなされた。小型スーツケース、5,500円。

三越の中は人でごった返しており、抄太郎は早く外に出たかった。3階の修理受付カウンターで値段を聞いて驚く。チャックの交換に6,750円+消費税。衣料の生地がなんとか説明していたが、(銀座価格か三越価格か知らんけども)それならいいですとワンピースをスーツケースに入れ、その場をあとにした。地元の街の修理屋に頼もうぜ。それがいいですよ。などと歩きながら言葉を交わし。7,000円でチャックを交換しなかったかわり、せっかくだからそれくらいのランチを食おうと意見がまとまり、ファさんが一度来たことがあるという地下の中華料理店へ。そこで海鮮コースを食べて、チャック交換代とほぼ同じくらいだった。

f:id:guangtailang:20201221121357p:plainロマンポルノ『ハードスキャンダル 性の漂流者』(1980・田中登監督)をFANZA動画で。劇中に「しらけ世代ってあんたたちのことかよ」みたいな台詞がある。男子高校生が26歳の女に対して吐くのだ。当時の彼らにとってしらけ世代と自分たちはまた異なるということか。試しにWikipediaで〈しらけ世代〉を調べてみると、範囲の定義には諸説あるようだ。個人的に厳密さを求める気もないが、1980年は空白的というか、途上というか、副題に漂流者の文字もあるように、その時代を生きる者、特に若者にとっては明確な潮流も見いだせず、平熱で漂っているような時代なんだと思う。いろんな言い方があるのだろうが、熱狂(学生運動)と熱狂(バブル景気)のあいだ。この映画はそうゆう空気をすくい取った佳品。【以下、ややネタバレあり】

冒頭、家出中の男子高校生がディスコティックで女子高校生と出会い、深夜の同伴喫茶で交接し、明け方の中央分離帯で別れるまでは秀逸。これはおもしろくなるんじゃないかと思う。

f:id:guangtailang:20201221121433p:plain万引きして躍動する高校生を俯瞰で。鈴木雅之の「ランナウェイ」がかかる。インベーダーゲームのテーブル台がありますね。

f:id:guangtailang:20201221121508p:plain万引きを手伝ったくれた女のあとをつける。電車を乗り換えてたどり着いた先の荒寥とした駅前は新百合ヶ丘なんだ。歴史の浅い街なのがわかる。ロマンポルノにはこういった開発途中のロケーションもわりかし出てくるが、郊外はこのようにしてつくられるという映像資料的な価値もある。

f:id:guangtailang:20201221121606p:plain漂流するのは男子高校生ばかりでもない。彼の両親も江ノ島で3P(スリーピーと発話される)したり、自宅でスワッピングしたり、性の漂流をつづけるのだが、この大人パートがおもしろくない。なんでだろうと考えて、俳優に魅力が乏しいのと、チープさが目立つんだ。このチープさは経済のことじゃなく、感覚のチープさだ。たとえば、もんたよしのりの「ダンシング・オールナイト」をBGMに、皓皓と照らされたダイニングでよにん裸になってチークダンスするのはチープだ。チープで陳腐だ。若者ならチープさをアナーキーな躍動に変換できるのだが。あるいはまた、天知茂の重厚さがあればチープさを豪勢なキッチュに変換することもできるのに。

f:id:guangtailang:20201221121647p:plain26歳の女(亜湖)は男子高校生の子を孕み、ふたりは荒寥とした新百合ヶ丘の坂道の途中にある高校生の実家に挨拶に行くだろう。

※話は違うが、先週金曜日(18日朝)にEMSで粉ミルクや零食をダンボールで送ったのだが、さきほど(21日夕)杭州蕭山に到着したという。早い。郵便局の窓口では1週間あるいはもっとかかると言っていたが。小蕾の実家である蕭山が空港の近くだからかな。ちなみに、船便で3週間前に送ったやつはまだ届いていない。