川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

針と歯車

f:id:guangtailang:20201029124306j:image数日前。錦糸町で久しぶりに北方の儿化音を聴いた。昼時この街に来ればだいたい入る中国料理店。それでも新型コロナで無沙汰だった。通されたのが相席で、僕も含め皆いちにんで黙々と食っているから、服務する彼女たちの声が高らかに響く。南方人を妻に持つと、いきおいその朋友も南方人ばかりで、反り舌音が懐かしく感ぜられる。漬け白菜と豚肉の炒め。ここのはヴォリュームがあるんだ。酸菜の方はたいらげたけど、米は残した。

YouTubeでそれなりのヴォリュームがあるにもかかわらず、あがっている動画すべてを見、次回作を心待ちにしているような熱情を傾けるチャンネルも少ないのだが、「話題の事件」は数少ないそのひとつだ。未解決事件等を扱うチャンネルは多く、他も渉猟したのだが、結局この「話題の事件」に勝るクオリティのものはないように思う。関西出身のににん、りゅうとビンジ両氏のかけあいで、日本で起こった未解決事件の数々を考察している。まず、ナレーションを担当するりゅう氏の声のトーンがいい。感情のあらわれない低く平板な声で、実に聴き取りやすい。こうゆう事象にはこのような声がうってつけと思わせる。一方、考察で登場するビンジ氏は西のイントネーションが強く、人柄の優しさが滲み出ているような温かみのある声である。両者のこのバランスが良い。考察におけるりゅう氏は相変わらずの声のトーンだが、犀利な洞察力に似合っている。りゅう氏のことは当初関東の人間だと思っていたが、「室蘭女子高生失踪事件」について語る際の〈パン屋〉のイントネーションであれっと思い、たしかご自身でも関西のイントネーションであるとおっしゃっていた。僕の友人にも関西出身者がいるので、〈パン屋〉のイントネーションを実地に聴いてみたいと思う。そういえば「堺市市営住宅首吊り事件」では、関東弁の男から〈あなたの部屋で人が死んでいる〉という電話がかかってくるという奇っ怪きわまりない始まり方をする。ともあれ、動画は毎回すっきりと構成され、テンポ良く、BGMも的確で、間然する所がない。りゅう氏の「まずは事件概要から、どうぞ」や「皆さんはどう考えますか?」などの決まり文句はクセになってしまう。コメントを読むと、冒頭の貌が怖くて飛ばすという人も多いようだ。僕はあの時計の針や歯車がぐるぐる回る導入部で、わくわくしてしまうけどな。

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