颱風の影響で友人Jとの檜原村キャンプが中止となり、彼の「神戸岩(かのといわ)行きたいですのに」の言葉も風雨の中に消えた。残念だが、機会をとらえて奥さん、その妹さんと是非行ってほしい。
さて、キャンプの代わりに友人J宅の庭でグリルをやることとなった。彼はとにかくグリルやりたい系壮年で、家でも頻繁にやっているのだ。火を熾し、焔のゆらぐのを眺めたい私もグリルは楽しみだ。
その前に私の希望で深大寺の蕎麦を食った。東京では浅草寺に次ぐ古刹であるというこの寺を一度は訪れたかった。ひどい雨だから人気はなかったが、そばに小学校があるのか、いつ間のにやらJと私はちびっ子のパラソルの波に紛れていた。土曜日で半ドンなのだ。蕎麦屋が立ち並び、名物というのは、水がきれいな場所なのだろう。髪が伸びて鬼太郎のようになっているJは、茶屋の前で一枚。
時間は遡るが、午前10時20分、Jはわざわざ拙宅までティエトウ(愛車)で迎えに来てくれた。Hさんにそれを伝えると、もしよければ駅まで自分も乗せてほしいと言い、Jは快諾した。レアなツーショットをティエトウの後部座席より一枚。
東京を東から西へ。植物園の方に迷い込んだか、鬱蒼とした中をゆく。ぐるぐるするが駐車場がよくわからんので、えいやと自動車修理工場の空き地にティエトウを駐め、700円をおやじに払う。見ればティエトウのタイヤがオイルの虹色にてらてらと光っている。
百貨店のような構えのイトーヨーカドー地下で食材や酒を調達し、J宅に到着。庭には雨除けに2階のベランダから垂らし、1階の目隠しフェンスにくくりつけられたグレーのシート。粘着テープだと剝がれたので、紐で固定。ホームセンターコーナンで購入したというが、尽力に頭が下がる。
慣れた手つきで炭を積み上げ、グリルの焔を調節するJ。私は何もしないをする、というわけで随分楽をさせてもらっている。
Jおすすめの手製やきとりを網に乗せる。他の肉はキッチンで烤いても大差ないが、やきとりだけはグリルで烤くと格段にうまいと彼は言う。たしかにそうだ。
この間、J1の鹿島対横浜FCの大逆転試合を観る。彼の奥さんが鹿島の熱狂的なサポーターで、カシマスタジアムへ何度も足を運んでいる。私も前を通るだけなら何度も。彼女は吉祥寺のサッカーバーにいるという。
個人的にはタンがうまくて、ばくばく食ってしまう。「焚き火を 眺めていると 素直になれるわ」と唱う女性があったが、ゆらめく焔を見つめていると、人間の原初的な本能が云々、脳内の波動云々などと解析せずとも、単純に心が落ち着く。雑念は剝がれて燃え滓となる。
この後、当初より企画されていたJから私への100の質問コーナー、室内に入って午前2時まで続編のようなマラソンのようなお喋りがつづき、私はトイレに立った。すると、個室で突如悪寒が走る。これはやばい。経験上、風邪の症状だとわかった。Jにその旨告げ、寝袋に潜り込んだが、内側から来る悪寒は一層強くなった。雨は止んでいるだろう。明日(というか今日)はJの奥さん、妹も交えてグリルでアクアパッツァをやる光景が明滅したが、悪寒でそれは叶わぬ。また、彼女らに風邪をうつすわけにもいかぬ。午前3時だった。
少しうとうとして、午前6時半に寝袋から抜け出し、帰宅する旨Jに告げた。彼はソファに仰臥した状態で「朝勃ちがすごいわ」と言い、「まだ酒が残っているから、駅まで送れませんけど」と言うから、「大丈夫」と返し、義妹への誕生日プレゼントを置き、J宅を辞した。駅に向かいながら足に違和感があると思ったら、裸足に靴を履いていた。
Jからプレゼントされたユニフォーム。28という数字には何か意味があるのだろうか。未解決失踪事件の話などもしたからいろいろ穿ってしまう。
午前7時50分、帰宅。