川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

準決勝

f:id:guangtailang:20191027224317j:image27日曇天。Hさんと約束していた湧水汲み、みかん狩り、道の駅での農産物買い、豆腐買いに寄居風布、ときがわを回る。ふたりとも気に入って何度か行っている土地だ。空のポリタンク2つをクルマに積み込み、出発。無論、夕方からの南ア対ウェールズ戦が始まる前に帰宅するつもり。関越道を走っていると前方の空が明るく、晴れそうな予感。

f:id:guangtailang:20191027224416j:image時間は遡り、26日。仕事を終え帰宅、即座にテレビを点けると目に飛び込んできたのが、「鶴翼の陣」と呼ばれているこれ。オールブラックス演ずるKapa o Pango(横浜にて)に対して企てられた。

f:id:guangtailang:20191027224434j:imageそして、鶴翼の陣とセットで語られているイングランド主将オーウェン・ファレルの不敵な笑み。たしかに何かしらゾクッとさせるものがある。イングランドがこの一戦に並々ならぬ覚悟と周到な計略を持って臨んでいると思わせるに十分。188cm、92kg。

f:id:guangtailang:20191027224506j:imageそして、開始1分36秒でイングランドが決めたノーホイッスルトライ。勢いに呑まれたようなオールブラックス。結果的にはイングランドが敵の長所を消し去り完勝した。19対7の点差以上に圧倒した内容で、オールブラックスってこんなだっけと思うほどだった。

f:id:guangtailang:20191027224639j:imageオールブラックスが前半を無得点で折り返したのは28年ぶりのことであるらしい。それにしても、実力伯仲の者同士が戦うと1トライの遠いことよ。この決戦に備えて2年半前から準備をしていたとエディー・ジョーンズHCは語るが、素直にイングランドを讃えるしかない。

f:id:guangtailang:20191027224852j:image寄居に着くと汗ばむほどの陽気で、妙に厚着してきた私をHさんが笑う。この土地の紅葉はまだ先である。歴の略字で厂なのだろうが、簡体字の历でなく厰の厂になっている、と思う。歴を遠目に見ると潰れて判別しにくいのでした処置だろう。

f:id:guangtailang:20191027224932j:imageバイパスのトンネルをいくつか潜り、インターを降りるとすぐにみかん山に至る。が、今回は先に湧水汲み。釜伏山の急坂をしばらく上っていくと、車道脇に日本水(やまとみず)がパイプで引かれている。この水は風布川の源流で、6km先で荒川に注ぐ。日本武尊の伝説があり、この名がついたのだ。ほんとうの源流附近は岩盤の脆弱化により現在立入禁止だと聞く。すでにクルマが連なって停車しており、大五郎サイズのペットボトルをせっせっと水汲場まで運ぶおやじを眺めながら、後方の邪魔にならない位置に私も停める。まあ、5分かそこらの作業だ。熊谷ナンバーが多いから地元の人たちだろう。

f:id:guangtailang:20191027224954j:image水汲場の反対側の景色を撮る。気持ち良い風が流れている。

さて、山を下りて、今度はみかん山を上る。クルマの後部でポリタンクの水がたっぷんたっぷん揺れている。前回と同じみかん農園に至ると、妙に来訪者のクルマが少ない。坂道に連なり駐車場の空くのを待った記憶があるが。そこで初めて時期的にちょっと早く来過ぎたかという思いがきざす。勿論、家でHさんと雑談する中で、まだ早いんじゃないかという話は出た。が、そこまで深くは考えずに25日から開園しているのだから、行けば樹によっては食べ頃になっているんだろう、ほら、早生みかんとかあるじゃないか、そうなんだと軽く納得し合ったのだ。

園のおばばに訊くと、今年はまだ早くて、出来もあまり良くない。ほれ、こういうのは1年おきだから。上の方まで行って真ん中あたりはまあいいんじゃないか、と言う。Hさんは日本人は敢えて正直に話して人を騙さないと妙に感心しているが、1年おきとはどういうことなのだろうと私は考えていた。帰宅してから調べると、「隔年結実」というのがあるらしい。果樹の生育のサイクルに不勉強で知らなかった。

f:id:guangtailang:20191027225208j:image汗の浮く広い額でバランスをとりながら斜面を上る私。175cm、90kg。

f:id:guangtailang:20191027225412j:image空気もうまいし日当たりが良いから腰を下ろして景色を眺めているとうとうとしてくる。風布とはいい名だと思わないかい? Hさんは甘いみかんの生っている樹を探して黙々と移動している。

f:id:guangtailang:20191027225436j:image受付の場所まで下り、休憩スペースでみそこんにゃくを頂く。1本100円。さっきのおばばの孫とおぼしきかわゆらしい女の子がお茶を運んでくる。日曜日に出かけもせず家業の手伝いをしているさまが殊勝である。小学校中学年くらいか。かわゆらしいなかに凛とした表情や仕草があり、Hさんが思わずにっこりする。

f:id:guangtailang:20191027225541j:image道の駅で農産物を買ったあと、ときがわに向かい、こちらに来た時は必ず寄る豆腐屋で買い物。ふたりともここのおからドーナッツをこよなく愛しているし、私は必ず豆乳入りソフトクリームに醤油をたらして舐める。何かの祭りか、店舗の前のスペースに出店が並んでいたので、白っぽい店構えの中で童顔の女性が淹れるカフェオレを飲んだ。

f:id:guangtailang:20191027225934j:image南ア対ウェールズ。この試合の前半はハンドレ・ポラードとダン・ビガーの気骨あふれるイケメン同士がペナルティキックを蹴り合う展開。そんな簡単にトライなんて取れやしない。終わって考えてみれば、準決勝のニュージーランドイングランドウェールズ、南ア、どのチームも結局1トライしか取れなかったのだ。そう考えると日本はまだまだこの水準には達していない気がする。

f:id:guangtailang:20191027230210j:imageアフリカーナーの後裔。

f:id:guangtailang:20191027230236j:imageウォーレン・ガットランドHCが戦前言ったように、美しい試合とはいかないが、ほんとうに強い者同士が戦った場合の燻し銀の輝きがある。

f:id:guangtailang:20191027230326j:imageほっこり笑顔のウェールズ人。解説者曰く、ニュージーランド出身のガットランドのウェールズ人評は、「為す人たち」なのだそうだ。多弁を弄せず、実行する。一方、アイルランド人はまずもってよく喋るという。まあ、伝聞の伝聞みたいな話だ。

f:id:guangtailang:20191027230614j:image172cm(ほんとうはもっと小さいと思う)のファフ・デクラークの胸ぐらをつかむ198cmのジェイク・ボール。この試合の印象的な場面であった。

f:id:guangtailang:20191027230631j:imageジョシュ・アダムスはこのトライで今大会トライ数単独トップに躍り出た。

f:id:guangtailang:20191027230732j:image古代ガリアの戦士の闘志。「ウェールズラグビー担当記者によると、ジョーンズ主将は素朴で謙虚、典型的なウェールズ人だという。南ウェールズの海沿いの小さなまちに自分の家を持ち、医者である妻とふたりの娘との静かな暮らしを好む。プロラグビー選手としてのキャリアを送りながらも、ウェールズスウォンジー大学の定時制で法律を学んだ。」(「敗戦ショックにも感謝のお辞儀ー誇り高きウェールズのレジェンド」松瀬学)より抜粋。

f:id:guangtailang:20191027230823j:imageドウェイン・フェルミューレン。ブリューゲル農民絵画の貌。192cm、120㎏。

f:id:guangtailang:20191027230925j:imageイングランドは予選プールでアルゼンチン、決勝トーナメントに入ってからオーストラリア、ニュージーランドと南半球の強豪をことごとく撃破してきている。決勝で南アフリカに勝利したならば、これは完璧な優勝と言わざるを得ないだろう。

f:id:guangtailang:20191029123720j:image