川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

老いの微笑

f:id:guangtailang:20190920104933j:imagef:id:guangtailang:20190920104959j:image19日夜、隣接区同業者団体との会食でローストチキンが出る。どこかなまめかしいかたち。向かいの主催者側の若者が慣れた手つきで肉を裂いていく。こちらは切り分けられた塊をかじるだけで楽なものだ。ジューシーで実に美味。ただ、右側でばかり噛むのはやや面倒だ。それというのも先日インプラントを左側の下奥歯に埋め込んだのだが、その箇所が化膿してしまったので歯肉を開いて膿を出し、レーザーで焼いた瘡蓋が覆っただけの状態で臨んだからだ。念のため、うがい薬を鞄に忍ばせていたが、それを使おうと便所に立つのは片方で噛む以上に面倒だった。小便だってけっこう我慢する方なのだ。

f:id:guangtailang:20190920105155j:image20日朝、Hさんの頭部・頸部MRI検査等に付き添う。眺めのよい8階で受付を済ませるとHさんは着替え、順番を待つ。しばらくすると呼ばれ、まず身長、体重、血圧を計測する。衝立1枚の隣りでやっているので、「わたし若い時、167。今、168。大きいね」と言うHさんの声が聞こえてくる。奥の方に目を転じると、50年配の男と20代前半にみえる痩身の女が並んで座っており、ふたりの会話に中国語のフレーズが微かに聞き取れた。親子かなと考えていると女が立ち上がり、靴音を派手に響かせながらこちらに向かってくる。何見てるのよ、と怒られるのかと思い身構える。つり目気味でえらの張ったシャープな顔立ち、昔の僕なら「ベイファンレン」とつい口走ってしまうタイプだ。背は勿論、高い。168のHさんよりも、たぶん僕よりも高い。女が通り過ぎると無意識のうちに僕は立ち上がっており、後ろ姿を見つめながら、「177」と測定していた。