川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

令和の羊肉串

半ば廃墟と化しかけている影视城の土楼で塑料の刀と矛を見つけ、対決するディンディンと壮年。シャオレイ撮影。

f:id:guangtailang:20190506024158j:image3日、晴れ。

f:id:guangtailang:20190506024155j:image毎夜、金山越府の客厅ではHさんとともにこの『我的前半生』と『都挺好』を観ていたのだが、马伊琍とともに主役を張る袁泉。この人を最初みた時に顔の造作が立体的なので混血かと思ったが、维基百科で調べるとやはり母親が回族とのこと。湖北省出身。

f:id:guangtailang:20190506024208j:image男側の主役、靳东。183cm。山東省出身だから平均身長なのだろう。ドラマは上海が舞台で日本の居酒屋風の店によく集うのだが、そこの店主が陈道明。日本から空輸された海鮮だからさぞかし高かろう。ここに集う人たちは富裕層である。

f:id:guangtailang:20190506024205j:imageシャオレイの检查报告を受け取りにふたりが医院に行っているあいだ、Hさんが半袖のパヂャマも買いに行きましょうと私と、早朝から来ていた母親を連れ、タクシーで商城に向かう。ずっと替えていないのか、母親の右腕の包帯が汚れており気の毒だ。ルルが护士なのにから。先日と同じ店で紺のチェックのパヂャマを買う。330元。さほど安くもない。ともあれ、中国に来るとパヂャマを買ってあげたり、或いは買ってもらったり、そして自分で買ったりということが頻繁に起こる。

昼飯。燕という字がついたと思うのだが、店名は忘れた。味道は江味馆が上だと思うが、店を出る時に待ち人の列ができていた。ちなみに一頃中国人は並ばないとか列に割り込むとかいわれていたが、ここ諸曁では皆ちゃんと並ぶし、五泄の船着場で列に割り込もうとした人は周囲から激しく詰問されていた。乡下の人はまた違うのだろう。食べながら、午後は影视城に行こうという話が持ち上がる。

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f:id:guangtailang:20190506024414j:image影视城の入場口で屋根付四輪自転車を借りる。敷地が広いし、陽光が強いので。もう1台4人乗りのやつを借りてデポジットも含め200元払う。あとで100元戻ってきた。ホテルなんかもこれがあるが、デポジットというのは性悪説で、日本では少ない。Hさんを隣りに乗せ、ぎこぎこ漕いでいると額から汗が流れる。ハリボテの飛行機を背景に1枚。

f:id:guangtailang:20190506024636j:image民国街のセット。人気もないまま白日に照らされている。建物の中に入ると荒れるに任されて、まさに廃墟。そして、女性陣にはまったく不評。没什么好玩というわけだ。

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f:id:guangtailang:20190506024629j:image土楼。これは福建省の山間に多く、客家が住んでいたんだよねと拙い中国語で皆に話してみるが反応が鈍く、自分が何か誤った知識を披露してしまったのかと思い、あとで調べたが間違ってはいなかった。本物を見に行くとなると、福州や厦門からバスで4時間もかかるらしい。

f:id:guangtailang:20190506024633j:image土楼に居合わせた事情に詳しい人によれば、去年あたりまではちゃんと管理がなされていたが、現在は完全にうっちゃられているらしい。まあ、私は廃墟とか好きだからね、これはこれで楽しめる。セキュリティも緩そうだし、この街にホームレスがいたら建物に入り込んでいくらでも雨露をしのげるだろう。そういえば敷地内に遊園地の廃墟もあった。

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f:id:guangtailang:20190506024622j:imageそうだ、榴莲を食べよう、とディンディンが云い、わりかし高級感のある果物店に寄る。叶姉妹ならぬ、叶氏兄弟という名の店。中国に来たら果物はむしゃむしゃ食うに限る。安いし、種類が豊富だから。

f:id:guangtailang:20190506025004j:image日が暮れて、フェンホンの家で晩飯。金山越府の林立する夜景。腹ごなしに卓球をやり、その後、シャオレイが明日から仕事なのでディンディンがクルマで実家まで送っていく。明日は私も帰国するので、どうしても羊肉串を食わないと収まりがつかない旨、Hさんに訴える。すでに時刻は午後10時半を廻っているし、夜宵は普段彼女に禁じられているのだが、明日帰国なので3人で行きましょうと壮年は懇願する。彼女はパヂャマ姿だったが、ディンディンに微信でクルマを廻すよう云い、午後11時には新疆人のやっている例の店へ向かっていた。ちょっとかじるだけと云いながらうまいので追加し、14本食ってしまった。パヂャマのHさんも5本食べた。この店には原形を保ったままの羊肉がだらりとぶら下げてあるのだが、それをみて彼女は新鮮だと思ったという。令和に入って初めての羊肉串がこの店で良かった。

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f:id:guangtailang:20190506025011j:image帰りの機内では『レプリカズ』(2019)を観た。キアヌ・リーブス主演だったが、どの場面も盛り上がりに欠ける退屈なサイエンスフィクションだった。10年くらい前に撮られすぐに埋もれた感じのする映画だが、最近の作なのだ。隣りの座席に20代の女性がおり、通路側に彼氏が座っている。額の少し照り上がった彼氏が英字の雑誌を読んでいて、勝手に香港人カップルかと推測したが、女性は『アリー/スター誕生』を日本語字幕で観ていた。そして達者な普通話で彼氏に話しかけ、彼氏も普通話で応じていた。そうゆう恋愛はどんどんしなさい、と壮年は思った。実に余計なお世話ですが。映画を観終わる頃、女性は鼻をぐすんと鳴らした。