川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

断崖とターゲット

にっかつロマンポルノ、『愛欲の標的』(1979・監督 田中登)。標的はターゲットと読ませるようだ。凡作。騙し騙され、男と女の腹の探り合いなのだが、なんだかテレビのサスペンスドラマをややエグくしたような薄っぺらさで、私はサスペンスに優雅さや重厚さを求めるか、そうでなければとことんキッチュな域にまで達して欲しいのだが、どちらにも中途半端で、瞠目するのは断崖のシークエンスくらいしかなかった。主演の宮井えりなと中丸信は良いと思うんだが、河西健司演じる無軌道な若者にリアリティがない。藤田敏八のようには当時の若者をうまく描けていない。

f:id:guangtailang:20190412115221p:plainマダムの宮井えりなと情夫の中丸信。中丸はこういう役が似合ってしまう。

f:id:guangtailang:20190412115303p:plain1979年の街場の不動産屋。中丸が働いている。この映画もそうだが、ロマンポルノには浴室がよく出てきて、当時はバランス釜全盛だ。2019年の感覚だとバランス釜は非常にチープな給湯機器にみえるが、この時代はかなりの邸宅でも風呂はバランス釜である。

f:id:guangtailang:20190412115338p:plain宮井が客を装い、脅迫状が届いたことを知らせる。別に他の場所に呼び出せばいいじゃないかと思うのだが、わざわざ客と不動産屋らしい会話で喋るところはなかなかユーモラス。

f:id:guangtailang:20190412115421p:plain暴力的な中丸。こういうのも似合っている。

f:id:guangtailang:20190412115458p:plainこの断崖絶壁は屛風ヶ浦なのかしら。曇天なので迫力が増している。

f:id:guangtailang:20190412115531p:plain映画の見所。3人で楽し気に散歩しながら、それぞれの脳裡にはそれぞれの謀略が渦巻いている。

f:id:guangtailang:20190412115559p:plainサスペンスに断崖絶壁はつきものといえ、これはいいですね。